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第3章 プラズマの応用(その2)


九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門

渡辺隆行

6.プラズマ製錬

金属の製錬への熱プラズマの利用に関しては、多くの研究成果が報告されているが、同時に電力多消費型プロセスとなる点が指摘されている。鉱石から金属を得るまでに数段階の工程を要するプロセスの単純・省力化、あるいは通常の選鉱や製錬法では処理困難な鉱石・化合物からの有価成分の回収において、プラズマ製錬は有用である。

6.1 金属酸化物の還元

酸化鉱の直接還元にプラズマ炉を用いる場合には、炭材を還元剤として原料と共に供給する方法と、水素やメタンをプラズマガスとして用いる方法がある。熱プラズマ中で解離した水素原子は強力な還元作用がある。一方、炭素は高温ほど還元を推進する。イルメナイト鉱石(FeTiO3)中の酸化鉄を水素またはメタンにより選択的に還元・分離することによりTiO2を得ることができる。

プラズマ炉による鉄鉱石の直接還元は粉鉱石の前処理が不要であり、単一工程で溶鉄を得ることが大きな利点である。このプロセスは電力が安い北欧で多く行われているが、我が国では経済的な理由から考えると実際のプロセスへの適用は困難である。

また炭素還元により難還元性の活性金属の酸化物(Al2O3、TiO2)から粗金属までの還元が可能である。ここでAlにおける問題点は中間生成物としてAlオキシカーバイドが生成しやすいこと、Tiにおける問題点は炭素と酸素の除去に限界があることである。高融点金属の酸化物(Ta2O5、Nb2O5)では、高温における炭素溶融還元により、高品位金属を得ることが可能である。

太陽電池用シリコンの安価な製造方法として、アーク炉を用いる方法がある。この方法は、粉末状の精製シリカの炭素還元と、それに続く一連の精製工程(脱炭、脱酸、一方向凝固)から成る。また金属シリコン融体からのボロン除去に対して熱プラズマの適用が有効である。熱プラズマによってシリコン中におけるリン、ボロン、金属不純物を目標値のレベルまでに低減することができ、通常の方法で製造したシリコンと同等レベル以上の太陽電池の変換効率を得ることができる。

6.2 金属化合物の熱分解

モリブデナイト精鉱(MoS2)を熱プラズマ中で直接熱分解すると金属Moを製造することができる。数段階の行程を要する現工法に比べて単一工程で金属Moを得ることができる。また大容量のプラズマフレームにジルコン砂(ZrSiO4)を供給し、ZrO2とSiO2に熱分解するプロセスがある。得られたZrO2とSiO2の混合粉はアルカリ溶液で処理することにより、高純度のZrO2を得ることができる。

6.3 タンディッシュ内溶鋼加熱

鋼の連続鋳造では、品質向上および操業の安定化のためには溶鋼温度を一定に保つことが重要あるので、タンディッシュ内溶鋼加熱にプラズマアーク加熱が適用されている。このプラズマ加熱技術は既に国内鉄鋼メーカーで実用化され、加熱能力や効率の向上を目指したトーチ改良が行われている。

7.プラズマ溶解

プラズマ溶解には以下の特徴がある。(1)スラグ精錬が可能である。(2)不活性または還元性ガス雰囲気で行うことにより精錬効果がある。(3)常圧下での溶解により成分元素の蒸発や飛散による損失が少ない。従って高級特殊鋼、超合金、活性金属、高融点金属などの溶解精錬法として魅力ある方法である。

7.1 活性金属の溶解

Ti、Cr、Mnなどの活性金属は溶解時に酸素や窒素ガスあるいは耐火物と接触すると直ちに反応してしまう。よってこれらのインゴットの製造にはプラズマアークを利用することが適しており、さらに同時に脱酸・脱硫も行うことができる。

また水素吸蔵合金(Ti-Mn系合金、Fe-Ti-O系合金)、形状記憶合金(Ni-Ti合金)、軽量耐熱材料の金属間化合物Ti-Alなどのプラズマ溶解技術が研究されている。

7.2 高融点金属の溶解精錬

Cr、Mo、W、Nb、Ta、Vなどの高融点金属は、溶融状態で酸素や窒素を吸収しやすく、耐火物との反応が激しいという性質がある。よってこれらの金属の溶解には不活性ガス雰囲気のアークプラズマが適している。V、Nb、Taなどの水素プラズマ溶解では迅速な脱酸や脱炭が可能である。これは熱プラズマ中で解離・活性化した水素原子が金属に直接作用するからである。

さらに水素プラズマ溶解では金属の分離、不純物の除去が可能である。この原理を適用したのが、Feからの脱Cuと脱Sn、Zrからの脱Feと脱Sn、Vからの脱Al、Nb-Fe、Mo-Fe合金からの脱Feである。

8.環境問題への応用

環境問題は大きな社会問題となっており、その解決のための先端基盤技術のひとつとして熱プラズマ技術がある。熱プラズマ技術はPCBやフロンなどの特殊な産業廃棄物の処理、および焼却灰の溶融処理などの大規模な一般廃棄物処理に適用されている。

8.1 焼却灰および飛灰溶融処理

都市ごみ焼却炉から排出される焼却灰や焼却飛灰には、重金属類やダイオキシン類が含まれているので、不溶化あるいは分解して無害化する必要がある。焼却灰の処理方法のひとつとして、プラズマを用いた溶融処理方法が実用化されている。焼却灰を溶融固化することにより、ほとんどがスラグとして取り出され無害化される。これにより体積の減少による埋め立て地の延命化が可能であり、さらにスラグを土木材料などに有効利用すれば資源の循環ができ、一石二鳥の効果がある。熱プラズマを利用した都市ごみ焼却灰の溶融処理プラントは1994年に実機炉(52 t/day)が松山市に設置されている。プラズマトーチは中空円筒状の銅合金電極で構成されており、電極内の圧縮空気の流量を変動することにより局所的な電極の消耗を防止して長寿命化が可能となっている。

都市ごみは日本国内で年間約5000万トン(1kg/日・人に相当)排出され,そのうち70 %が焼却処理される。都市ごみ焼却場で発生する焼却飛灰にはPbやZnといった揮発性の高い重金属類が数%程度含有されている。焼却炉の電気集塵器やバグフィルター等の集塵装置で捕集される飛灰は特別管理一般廃棄物に指定されており,廃棄物処理法施行令で4種類の飛灰処理法が定められている。その中のひとつが溶融固化方式である。これは飛灰を高温(1200-1500 ℃程度)に晒して溶融し,スラグとして取り出すものである。また,飛灰にはダイオキシン類も高濃度で含まれているが,溶融固化法はこのダイオキシン類を分解するという利点も併せ持つ。

飛灰や焼却主灰を溶融すると低沸点の重金属類・塩類が加熱時に揮散し,飛灰よりもさらに重金属類が濃縮された灰が発生する。これが溶融飛灰と呼ばれるものであり,溶融された飛灰量の数%程度発生する。溶融飛灰には,もとの焼却飛灰よりさらに高濃度の重金属類が濃縮されているため,焼却飛灰よりも厳しい取り扱い方法が要求される。溶融飛灰は,現状ではセメント固化や薬剤固化等の安定化処理を経て管理型処分場に埋め立てられているが,飛灰より高濃度の重金属を含み,またNaClやKCl等の塩類も多いため,固化処理後の安定性を保持することが非常に困難である。また,酸・アルカリ系の薬品を用いる湿式処理法は,最終的に大量の水処理を必要とするプロセスでもある。従って,薬剤費のコストは高価となり,また排水処理のための設備も大掛かりなものとなる。このため,水処理を必要としないコンパクトかつ低コストの溶融飛灰処理技術の開発が要望されている。その解決策のひとつとして,水素を用いたRF熱プラズマによって,溶融飛灰を無害化処理する方法がある。

溶融飛灰を還元雰囲気のRF熱プラズマの高温場に投入することで,灰粒子は瞬時に蒸発し分解される。この時,溶融飛灰中に酸化物として存在していたPb,Znのような重金属類は,金属原子となってプラズマ中に存在することになる。これらの分解生成物をプラズマ下流側で個別もしくはグループ化して回収することにより,重金属成分が含まれない無害な灰分と重金属類を分離することが可能になる。

RFプラズマ中で分解された飛灰成分を分離回収するためには,その凝縮過程の制御が重要である。凝縮時の核生成において重要なパラメータである過飽和度をもとに求めた凝縮温度を図1に示す。この図からZnOの凝縮温度が水素に大きく影響されることがわかる。焼却飛灰や溶融飛灰では,低沸点金属が高沸点物質粒子の表面に化合物として凝集している。還元性プラズマを用いるこの方法は,種々の物質が混在した灰粒子をガス状・原子状にして分解もしくは分離し,その後の凝集プロセスを制御することにより,成分毎に個別回収を行うものである。

プラズマ下流で捕集した物質と捕集温度との関連性を確認するために,RFプラズマトーチおよびその下流の恒温加熱槽で構成される溶融飛灰処理装置で実験を行った。飛灰はプラズマトーチの中心部から粉体供給ノズルから供給し,恒温加熱槽の温度を任意に設定した。特にアルゴン−水素プラズマの場合には700-900 ℃の温度を境に,それより高温領域ではPbやZnなどの重金属が少なく,低温領域では重金属を多く含む物質が回収されている。この高温領域で回収された物質に含まれる重金属は微量(Pb:0.04 wt %,Zn:0.05 wt %)であった。よって水素RFプラズマによる溶融飛灰処理システムは,コンパクトかつ低コストの処理技術として有望である。

8.2 低レベル放射性廃棄物の溶融処理

原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物のうち,不燃・難燃性雑固体廃棄物は未処理のまま貯蔵されている。この廃棄物の減容化と安定化の対策として,プラズマ溶融誘導炉を用いた低レベル放射性廃棄物の処理システムがある。減容処理方法としては,切断,圧縮,溶融等があげられるが,減容比がもっとも大きく,多様な廃棄物を処理しても均一な廃棄体を得ることができる溶融処理方法が最も適切である。この溶融処理方法のうち,RFプラズマと誘導加熱炉の組み合わせは,可燃物,難燃物,不燃物の一括処理が可能である。さらに酸素をプラズマとして用いることにより,難燃物の迅速な分解燃焼処理を可能であることから,最も適した処理方法と考えられている。

減容処理としては従来から直流プラズマを用いる方法が用いられているが,難燃物の焼却では有効と考えられている酸素富化燃焼では,電極の消耗が激しい。また,誘導加熱による溶融も用いられているが,コンクリートやガラスなどには適用することができないという問題点がある。RFプラズマと誘導加熱炉を組み合わせる方法は,これらの欠点を補うものと考えられている。酸素プラズマを利用した廃イオン交換樹脂の処理システムが開発されている。このプロセスは,原子炉等で発生した放射性核種の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂を,酸素プラズマを用いて減容化と安定化を行う方法である。

8.3 廃イオン交換樹脂の処理

高温環境において腐食した原子炉の構成金属材料は,一部はイオンとして,他は懸濁物として冷却水によって炉心に到達する。そこで中性子の照射を受けて放射化された腐食生成物は系内を循環し,配管などにクラッドとして付着する。クラッドを構成する元素の大部分はFeであるが,放射能への寄与率は60Coおよび54Mnが高い。これらの核種の起源は,原子力発電所の構成材料であるステンレス,ステライト,インコネルなどの構成金属であるCo,Ni,Feである。特に60Coは他の核種と比較して放射能の半減期が長いこと,およびγ線エネルギーが高いので扱いが難しい。

原子炉で発生した蒸気はタービンを駆動させた後,復水器で凝縮する。復水器の上流で生成した腐食生成物は,復水浄化装置でイオン交換樹脂により除去される。このように原子炉内で放射化された放射性同位元素を浄化処理した粉末イオン交換樹脂は,放射能を持つCo等を吸着している。廃イオン交換樹脂は施設内貯蔵されるのが一般的であるが,貯蔵場所の確保が難しいため,減容・安定化処理が望まれている。廃イオン交換樹脂は,難燃性のため通常の焼却・減容処理は難しいが,低レベルの廃樹脂は焼却炉で雑廃棄物と混焼して減容化し,セメント固化等により均一固化体として施設内貯蔵または処分するようになっている。一方,高レベルの廃樹脂の大半は,未処理のまま施設内のタンクに貯蔵されている。また,廃止措置時に発生する廃樹脂も同様に処理方法は決まっていない。

廃イオン交換樹脂を処理する効率的な方法として,減圧下(0.25-0.9 torr)のRFプラズマを用いる方法がある。この方法ではプラズマ中の酸素原子やラジカルによって,タールや煤等の二次廃棄物を完全酸化によって低減できる。これらの活性粒子は,イオン交換樹脂や樹脂の分解ガスに直接作用して,アルキル基から水素を引き抜き,C-C結合への割り込みや切断を経て炭化水素の酸化を行う。その結果,樹脂はCOやCO2,H2Oとしてガス化されて減容化される。また,樹脂の交換基に吸着されていたCoなどの金属イオンは,酸化物として減容残さ中に残留する。この減圧プラズマによる廃イオン交換樹脂の処理プロセスは,焼却に比べて低温処理プロセスなので,放射性核種の気相への移行を低減できること,酸素プラズマによる直接酸化プロセスなので,排ガス量を低減できることが利点である。

プラズマジェットに酸素を吹き込み,イオン交換樹脂を大気圧下で処理する方法も検討されている。処理時間とともに樹脂の重量は大きく減少し,20-40分程度の処理で90-95 %の質量減少率が得られている。また,赤外吸収スペクトルの結果から,強酸性イオン交換樹脂の特徴であるスルホン基のピークが時間とともに小さくなり,20分の処理で完全に消失していることが確認されている。X線回折の結果では,イオン交換樹脂に吸着されたCoはCoOとCo3O4となり,CsはCs2SO4となっていることが示されている。

 
酸素プラズマで処理したコバルトを吸着したイオン交換樹脂
酸素プラズマによってイオン交換樹脂の質量は5%程度までに減少します。さらに放射性元素は残渣中に固定化することができます。


8.4 フロンの分解

フロンが原因となっている成層圏オゾン層破壊や地球温暖化などの環境問題を解決するには,フロンを適切に分解処理して,フロンの大気への放出を抑制することが必要である。モントリオール議定書の締約国において,適切なフロンの分解技術として認定された「認定技術」は,プラズマ法,燃焼法,セメントキルン法,酸素−水素炎法である。このうちプラズマによるフロン分解法としては,アーク放電,マイクロ波放電,コロナ放電を用いる方法が実用化されている。ここでは,水蒸気を用いたRFプラズマによるフロンの分解方法について解説する。水蒸気を用いた高周波(RF)熱プラズマにより,フロンを分解するプラントが市川市と北九州市に設置されていた。このプラントでは,圧力が200 torrの条件で100 %水蒸気プラズマを200 kWで発生することにより,フロンを70 kg/hで分解している。

水蒸気がない場合には,CCl2F2やCClF3などの生成を起こす不均化反応,C2Cl3FやC2Cl3F3などの生成を起こす二量化反応等が起き,さらにすすの生成が観測されることが確認されている。水蒸気プラズマを用いる利点は,これらの副反応を抑制することである。

水蒸気プラズマによってフロンを分解すると,HFやHClが生成する。これらの分解ガスを水中に通すことにより,HFやHClを水溶液として除去する。また,分解ガスを直接水中に通すことにより,80 ℃程度にまで一気に冷却をすることができるので,ダイオキシン類の再合成を抑制することができる。その後の排ガスはスクラバや活性炭除去塔で浄化される。

オーストラリアのPLASCONプラズマプロセスは,直流プラズマジェットに水蒸気を供給することによりフロンの分解を行うプロセスである。150 kWのプラズマジェットでCFC-12(CF2Cl2)を40 L/minで分解しており,プラズマパワーに対する供給量の比を6 mol/kWh以下にすれば,副反応で生成するCF3Clを抑制することができる。水蒸気をプラズマガスとして用いる場合には,酸素を用いる場合よりCF3ClとCF4の生成を抑制することができる。また,ドイツでも100 %水蒸気の直流プラズマジェットでフロンを分解する試験プラントが開発されている。

8.5 ハロンの分解

ハロンは臭素を含むフロン類であり,消火能力が高いことから,コンピュータ室,電気室,駐車場などの禁水場所での消火設備に利用されてきた。しかしハロンはオゾン層破壊物質に指定され,また地球温暖化係数が大きいことから,世界的に生産が全廃されたが,現在でも全廃される以前に製造されたハロンは使用が認められている。ハロンは他の消火剤に順次取り替えられているが,廃棄されたハロンを処理する方法はまだ確立していない。ハロンの分解はフロンよりコスト的にも技術的にも難しいが,熱プラズマを用いる処理方法は効率的なハロンの分解方法のひとつである。ハロン管理量のうち,およそ98 %がハロン1301(CBrF3)であるので,ハロン1301の処理方法を確立することが急務である。

前章のフロン分解装置として紹介した水蒸気RFプラズマを用いて,ハロンの分解が行われている。フロン分解と同様の条件で,ハロン1301を50 kg/hで分解することに成功している。

前述のPLASCONプラズマプロセスを用いて,ハロン分解の研究も行われている。水蒸気を用いたCF2ClBrの分解では,プラズマパワーに対する供給量の比が10 mol/kWh以下ならば,未分解のハロンは無視できるという結果を得ている。分解ガスをアルカリ処理することにより,HBr,HF,HClを水溶液として除去することができる。ただし分解ガスをアルカリ処理する方法は,排水処理のための設備が大がかりになることが欠点である。

最近はフロン分解ガスとして生成する臭素やフッ素を酸化カルシウムや酸化マグネシウムなどの固体アルカリ材と反応させて回収する乾式熱分解法が検討されている。このように水処理を必要としない廃棄物処理システムは経済的に有利な方法である。ハロンの分解によって生成するフッ素や臭素をそれぞれCaF2 とCaBr2として固定化して効率的に回収できることが,乾式熱分解法の特徴である。

8.6 PCBの分解

酸素プラズマあるいは空気プラズマを用いて,酸化雰囲気でPCBを分解するプロセスが検討されている。例えば,プラズマジェットによる液体廃棄物の処理システムを大型トレーラーに載せるシステムが実用化されている。327 kWのプラズマジェットにPCBを0.4 kg/minで供給して,PCBを分解することができる。また,前述のPLASCONシステムにおいて,酸素とともにPCBを吹き込むことにより,PCBを処理するプラントが完成している。このPLASCONシステムでは,150 kWの直流プラズマジェットによってPCB を含むオイルと酸素と反応させることにより,PCBを40-50 kg/hで処理している。

8.7 タイヤの処理

廃タイヤを処理する方法として,廃タイヤを燃焼してそのときの燃焼熱を利用するプロセスがある。しかし,この場合には排ガスとしてNOx,CHx,SOx等の生成が避けられず,さらにHg,Zn,Cd等の重金属も排ガスに含まれてしまう。よって廃タイヤを処理する場合には,燃焼するのではなく,熱分解して燃料ガスを合成する方法が適している。

特に熱プラズマを用いて廃タイヤの熱分解する場合には,C2H2,CH4,C2H4,H2,COなどから成る燃料ガスを効率よく合成することができる。このプロセスではプラズマガスとしてアルゴンあるいはアルゴン−水素の混合ガスを用い,プラズマジェットの下流に3 kg/hの水蒸気を供給する。80 kWのプラズマジェットで,50ミクロン程度の粉体にしたタイヤを1.5−4 kg/hで処理し,4−7 MJ/m3の燃料ガスを合成することができる。

廃タイヤ処理では,ZnO,SOx,NOxの発生量を制御することが重要である。熱プラズマを用いるプロセスでは,SOxやNOxを100−200 ppmに抑えることができる。また,ZnOはフィルターで捕集することができる。このように熱プラズマによる廃タイヤの熱分解プロセスは魅力的な方法である。

8.8 製鉄・製鋼ダストからの金属回収

製鉄・製鋼工場からは大量にダストが発生する。特に電気炉ダストは装入原料の1〜2 %に相当し、Zn、Pb、Crなどの有価金属を含んでいる。熱プラズマにダストを吹き込むことにより、蒸気圧の高いZnやPbを炉頂部から、またその他のCrなどの金属は炉底部から回収することができる。

またプラズマアーク溶解により、自動車の廃触媒からの白金族の回収、Alの溶解や鋳造過程で生じるドロスからのAl回収などのプロセスが開発されている。まだ研究段階ではあるが、TaコンデンサスクラップからのTaの回収、ジルカロイスクラップからのZrの回収がある。

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もっと詳しく調べたい方は,こちらの解説を参考にしてください。