| ホーム | 渡辺教授 | 研究 | 業績 | 装置 | メンバー | 卒業生 | 学生業績 |
| 講義 | 学会報告 | 入学希望者 | トピックス | サイトマップ |

論文題目「水素還元による月土壌シミュラントからの水製造における反応機構

吉田秀人

本研究では、水素還元による月土壌シミュラントからの水製造実験を行い、水生成速度および累積生成水量についての考察を行った。主な実験結果を、以下に示す。
(1) 反応温度が1273 Kを越えると、固体試料は部分的に溶融や燒結を発生し反応効率が低下する。さらに、試料が完全に溶融(融点は1473 K)する可能性もある。したがって、反応温度は1273 Kが適当である。
(2)試料粒径が大きい試料を使用した場合、粒子の中心付近で水素流路が遮断され、還元されずに内部に残存したFeOおよびFe2O3が確認された。よって、生成水量を多く得るためには、試料粒径は小さいほど適当である。
(3) 反応器の入口圧力の上昇により、還元に必要な反応時間が増大した。入口圧力の上昇による生成水量にはほどんど変化がないため、効率を考慮すると低圧であるほど適当である。また、反応時間は約10分である。

また、水素還元に関する数値解析を行い、本研究の律速段階についての検討を行った。主な実験結果を、以下に示す。
(1) 水素の粒子中への移動現象に関する3過程の各抵抗値の比較を行い、内部の物質移動過程が律速である。
(2) 実験結果との比較の結果、下流のガス流路に生成水の移動を妨げる原因が存在する。

水素還元の解析結果から、還元反応器についての検討を行った。月土壌シミュラントの水素還元におけるガス境膜拡散、粒子内部拡散、および表面反応の各抵抗値を比較した結果、粒子内部の拡散抵抗が大きく、ガス境膜拡散抵抗および表面反応抵抗が無視できることがわかった。この結果は、固定床、流動層を問わず同一のものである。ガス境膜拡散が律速段階であるとすると、ガスと粒子の接触を促進させるために流動層を用いることに利点がある。しかし、月土壌シミュラントの水素還元では粒子内部の拡散が律速段階であるので、固定床で十分である。また、重力パラメータを考える必要がないという点も操作上有効であるといえる。したがって、実際の月面上のプロセスにおいても固定床を用いたプロセスを提案する。

今回は水素流路については制御できず、同一実験条件においても圧力損失のばらつきが確認された。特定の水素流路が形成されると、試料全体の均一な反応が行われないため、累積生成水量が減少する恐れがある。ゆえに、充填層内部の水素流路の制御が必要である 。
・ 水と水素の分離、生成水の回収、および水素の再利用を考慮したプロセスを構築する。
・ 月面の真空状態を想定し、ポンプにより反応器内の圧力を真空にした状態で、加熱し、加熱炉の性能評価実験を行う。
・ 粒子内部まで還元を進行させるための検討を行う。

2000年11月 月資源利用に関する修士論文の成果をコロラドにて発表。この様子はNHKで放送されました。
詳細は
こちら



国際学会

国内学会