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論文題目「直流アークプラズマによるSn-Agナノ粒子の合成」

田中 学

熱プラズマによるナノ粒子合成法の一つに、H2アークを用いたナノ粒子合成法がある。この方法は、陽極上にナノ粒子の原料となる金属塊を置き、プラズマ中で解離した水素が溶融金属中に溶け込むことにより、金属の蒸発が促進される作用を利用している。そのため、ナノ粒子生産量が多く、効率的なナノ粒子の製造が可能であることから、産業応用を目的として研究が行われている。しかし、その蒸発促進機構やナノ粒子の生成機構に関しては未だ解明されていない点が多い。そこで本研究では、ArおよびAr-H2アークを用いて合金ナノ粒子の合成を行い、アーク処理中における金属蒸気の発光の分光分析、また生成ナノ粒子の分析を行うことにより、H2アークによる金属の蒸発促進機構について検討した。

合金ナノ粒子の試料としては、鉛フリーはんだ材料として用いられているSn-Ag合金を用いた。処理前試料のSn-Agインゴットの組成、およびプラズマガスの水素濃度を変化させてナノ粒子を生成し、X線回折、誘導結合プラズマ-発光分光によりナノ粒子の組成を同定した。また、透過型電子顕微鏡による観察、BET法による比表面積測定により、粒径分布および平均粒径を求めた。

Ar-H2アークによって生成したナノ粒子組成は、Arアークの場合に比べ、Snリッチになるという結果が得られた。また、Ar-H2アークでは蒸発量が著しく増加するため、Arアークの場合と比べてナノ粒子の粒径が大きくなることがわかった。アーク処理中における金属蒸気の発光分析では、アーク中のH2濃度の増加に従い、Snの発光強度が著しく増加するという結果が得られた。これらの金属蒸気の発光分析およびナノ粒子組成分析の結果より、H2アークを用いることによって、Snの選択的蒸発促進が起こっていることが確認できた。H2アークによる金属の蒸発促進の要因として、溶融金属に溶解した水素原子の再結合熱による溶融金属の局所的加熱、水素添加の熱伝導率の上昇などが考えられてきたが、今回の実験結果はそれだけでは説明できない。そこで、蒸気圧の大きい水素化物の生成、あるいは溶融金属中に水素が入り込むことによる活量の変化、などの可能性が推測される。

研究業績は「田中の博士論文概要」をご覧ください.