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論文題目「レーザー支援プラズマCVDによるsp3-結合性窒化ホウ素薄膜の合成および特性評価

佐藤裕平

sp3-結合性窒化ホウ素はダイヤモンドを超える、物質中最大の6.4 eV以上のバンドギャップを持ち、p型、n型どちらの半導体にもなることが示されていることから、短波長の固体発光素子、高温半導体や光学材料として大きな可能性を持つ物質として期待されている。

当研究においては、プラズマCVDにおいて表面プロセスを紫外光励起する手法の、レーザー支援プラズマCVDを用いることでsp3-結合性nH-BN(n=5,6,…)の合成に成功した。薄膜合成方法は以下の通である。チャンバー内にシリコン基板を水平方向に対し垂直に設置する。この基板に向け、上方からB2H6、NH3を原料とする誘導結合型プラズマを噴出させ、同時に、波長193 nmのArFエキシマレーザーを光学系を経て基板上に集光した。レーザー光が照射される領域にのみ、sp3-結合性BNが成長し、レーザー光が当たらない部分には従来のアモルファス的なsp2-結合性BNが成長する。

得られた薄膜のSEM像から、〜20 mm程度の紡錘状形状がレーザー照射方向に沿って形成されている様子が見られた。これらの薄膜はX線回折により、sp3-結合性6H-BNおよび30H-BNという新型のBNが成長していることがわかった。なお、多形間の熱力学的安定性の差はごくわずかであるため、さらにほかの多形結晶構造が形成される可能性がある。

この薄膜の表面に分布する、先端が尖ったアスペクト比の大きな形状は、電界中に置かれると、先端部分に電界集中が生じ、先端からの電子放出が促進される。Si基板上で作成された薄膜試料からは、0.436 V/mmの低電界において、16 mA/cm2の電流密度が得られた。この特性は、コーン形状、及び分布に依存すると示唆されており、それらを合成条件から最適化させることで、更なる性能向上が期待できる。

合成時には基板原始の自然ドープが製膜と同時に起こるということもわかった。このドーピング機構を利用し、n型Si基板上へのp型BN薄膜合成を行い、p型BN/n型Siヘテロ接合ダイオードの作製を行った。電流・電圧測定から、このヘテロ接合ダイオードは3桁以上の良好な整流作用を示し、さらに、光照射により強い起電力を発生する試料も得られた。このエネルギー変換効率は、現在1.5%程度の値が得られており、これは薄膜太陽電池として優れた値を示しているといえる。


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