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論文題目「誘導結合型熱プラズマによる特異形状を有する機能性ナノ粒子の合成」

野田 淳

本研究では,超高温,急冷を特長とする誘導結合型熱プラズマを利用し,GEMS模擬粒子の合成および,特異形状を有する機能性ナノ粒子合成を行った.

GEMS模擬粒子合成では,GEMSと同じ組成で合成したナノ粒子の非晶質化を試みた.SiO2の系では,ケイ素の酸化反応における標準ギブズエネルギーの値が負であることから,原料由来の酸素のみで容易に酸化され非晶質化することができた.

MgO-SiO2の系では,キャリアガス流量を6.5 L/minまで上げてより高い急冷効果を生み出すことで,原料にMgOが 50 wt.%の条件で生成物粒子の非晶質化に成功した.

Fe-MgO-SiO2の系では,冷却ガスを導入することで金属鉄を含有するケイ酸塩の非晶質化に成功した.また生成物のTEM像から粒子はGEMS粒子とよく似た形状を持っており,GEMSが非平衡凝縮過程で生成した可能性を示唆する結果が得られた.

金属内包非晶質ナノ粒子の合成実験では,金属種,金属含有量および冷却ガス流量による金属含有非晶質ナノ粒子への影響を調べた.また得られたナノ粒子において,TEM観察,粒径,組成および金属内包率の評価を行った.その結果,最も影響を与えるパラメータは金属種であった.金属内包率は,Fe,Mo系では80%超の高い内包率を示し,Ni,Sn系では50%程度,Zn系10%程度となった.Mo系では完全に固化したMo粒子に非晶質ケイ酸塩が凝縮するため高い金属内包率となった.Fe,Ni,Sn系では最初にSiかSi-Oクラスターいずれかの核生成が起き,その後,Me,Si,Mg,Oが凝縮してMe-Si-Mg-O融液をつくる.融液相に溶解できなかった金属は非晶質粒子表面に不均一核生成すると考えられることから,金属のケイ酸塩に対する溶解度の大小関係Fe>Ni>Snと金属内包率とが同じ大小関係を示したと推察される.また,Zn系では,Znの沸点がSiO2やMgOの融点よりも低いために,Znが完全に固化した非晶質相表面へ不均一核形成したために著しく低い内包率になったものと思われる.

TiO2付着型WO3ナノ粒子の合成では,2つの原料導入機構を用いてWO3とTiO2を別々に導入することで,WO3とTiO2の両方の高い結晶性を持ったナノ粒子を生成できた.またメチレンブルーの脱色反応を利用し,合成した生成物がWO3ナノ粒子単体のものよりも優れた触媒活性を有することを確かめた.

以上のように,誘導結合型熱プラズマを用いたナノ粒子合成法は,短時間かつ一度の反応で特異形状を有する機能性ナノ粒子を合成できることから工業的にも優れた手法であると言える.

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