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論文題目「高周波熱プラズマによる窒化物およびホウ化物ナノ粒子の合成」

勝田健司

本研究ではAr-N2プラズマ中に原料粉体を供給することにより、ホウ化物および窒化物の混合ナノ粒子を合成した。原料粉体としては、Ti、Ta、Nb、Mo、Co、Fe、Cr、V、Mn、Al、Si、LaB6、AlB2、AlB12あるいはSiB6に対して、Bを混合した粉体を用いた。合成したナノ粒子の平均粒径は、約10 nmであった。

合成したホウ化物および窒化物の割合は、ホウ化反応と窒化反応のΔGおよび金属とBの核生成温度に影響を受ける。

Ti-B-N 系では、ホウ化物および窒化物が合成された。これは窒化反応およびホウ化反応のΔGが共に負であるため反応が進みやすく、またTiとBの核生成温度が比較的近いためである。同様にホウ化物および窒化物が合成された系はCr-B-N系、V-B-N系である。

Ta-B-N系では、少量のホウ化物および窒化物が合成された。窒化反応およびホウ化反応のΔGが負であるにもかかわらず、ホウ化物は合成されにくかった。これは、Bよりも金属の均一核生成温度が高いためである。同様の結果が、Nb-B-N系で得られた。

Co-B-N系では、ホウ化物のみ合成された。これは窒化反応のΔGが正であるので、窒化反応が起こりにくいためである。また、金属とBの核生成温度の差が大きいCo-B-N系およびFe-B-N系では、ナノ粒子中のホウ化物の割合はTi-B-N 系に比べ少ない。しかしMo-B-N系では、MoとBの核生成温度の差が小さいため、ナノ粒子中のホウ化物ナノ粒子は比較的多い。

Al-B-N系では、金属とBの均一核生成温度の差が大きいにも関わらず、ホウ化物が合成された。また窒化物も合成された。これは、ホウ化反応のΔGおよび窒化反応のΔGが負であるため反応が起こりやすいためである。原料粉体としてAlB10およびAlB12を用いた時も同様の結果が得られた。

Si-B-N系では、金属とBの均一核生成温度の差が小さいにも関わらず、少量のホウ化物のみ合成された。これは、Siのホウ化反応のΔGが正であり、反応しにくいためである。原料粉体としてSiB6を用いた時も同様の結果が得られた。

ホウ化物ナノ粒子の生成過程は、Bおよび金属の均一核生成温度に影響される。金属よりBの均一核生成温度が高い時に、ホウ化物ナノ粒子が生成する過程は、まずBが均一核生成を開始し、そのBの核に対して金属が不均一凝縮を起こす反応過程である。そのためにホウ化反応が起こりやすい。逆にBよりも金属の均一核生成温度が高い時にホウ化物ナノ粒子が生成する過程は、まず金属が均一核生成を開始し、その金属の核に対してBが不均一凝縮をする反応過程である。しかし、金属の均一核生成温度はほぼ融点に等しいため、金属は均一核生成を開始してからすぐ固相となる。つまりBは固相状態の金属に不均一凝縮する。そのため、ホウ化反応が起きにくい。また、ナノ粒子中のホウ化物の割合は、ホウ化反応のΔGに影響される。

窒化物ナノ粒子の生成過程は、金属が核生成し、その金属の核に対しN2分子が反応する過程である。また、ナノ粒子中の窒化物の割合は、金属とN2分子との窒化反応のΔGに影響される。

ナノ粒子中のホウ化物と窒化物の割合は、金属のホウ化反応のΔGと窒化反応のΔGの比、およびBと金属の核生成温度の比に影響される。熱プラズマによるナノ粒子の合成では、準安定相や非平衡組成のナノ粒子が合成される。しかし、本研究で合成したナノ粒子の組成は、ΔGによる平衡組成により説明することができた。これは、ナノ粒子の生成が高温で行われているため、反応速度が速いためであると考えられる。


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