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論文題目「Investigation of arc discharge phenomena for waste treatment
(廃棄物処理のためのアーク放電現象の研究)」


李天明

論文は「Investigation of arc discharge phenomena for waste treatment (廃棄物処理のためのアーク放電現象の研究)」と題し,英文で書かれ,全6章で構成されている。

 第1章「General introduction」では,各種の熱プラズマ源の開発,およびアーク現象に関する研究の現状をまとめ,熱プラズマを用いたプロセスの研究動向,および廃棄物の処理技術とその分解機構の研究動向をまとめ,本研究の目的について述べている。

第2章「Discharge phenomena of DC arc for water plasma generation」では,水のみでプラズマガス供給と電極の冷却を同時に行っている水プラズマの特異な放電特性を調べるために,高速度カメラとオシロスコープを同期してアーク変動を観察している。プラズマガスである水蒸気の電極近傍の流動がアーク変動に影響を与えることを明らかにし,さらにアーク電流を増加するとアーク変動の周波数と電圧変動が大きくなり,さらにプラズマフレームが大きくなるという結果を示している。これはアーク電流を増加するとプラズマ入力電力が大きくなり,水の蒸発が促進され,プラズマガスである水蒸気流量が増加したためであると考察している。また,Hf,Zr,Ta,Mo,Irを陰極材料として用いて電極の消耗現象を考察し,水プラズマの強い酸化雰囲気では陰極の表面に酸化物が生成されることを示し,HfO2の融点と沸点が他の陰極材料の酸化物より高いことからHfが水プラズマの陰極材料として適切であることを明らかにしている。

第3章「Discharge phenomena of long DC arc」では,電極間距離が400 mmと長いロングDCアークは,プラズマ中の処理物質の滞留時間を長くできることが可能であるが,その放電現象が明らかではないことから,ロングDCアークを産業的に応用するには,アークの放電特性を明らかにすることが必要であると述べ,ロングDCアークの電圧変動解析および高速度カメラによるアーク変動の画像解析を行っている。アーク電流を増加するとジュール加熱によりプラズマの電気伝導度が大きくなるため,アーク電圧が小さくなることを示している。またプラズマガス流量を増加すると,熱的ピンチによりアークの中心温度が上昇するため,アルゴンアークでは電圧が小さくなるが,窒素アークでは窒素の解離によって電圧が大きくなることを示している。

第4章「Control of long DC arc with magnetic field」では,外部磁場によってロングDCアークを制御する方法とその制御機構を明らかにしている。アークの周囲に巻かれたコイルに流す電流を増加すると,アークに働くローレンツ力が大きくなり,アークの変動が激しくなり,大きなアーク体積を得られることを示している。また,プラズマガス流量を増加すると,アーク柱が細くなるため電流密度が大きくなり,アークに働くローレンツ力が大きくなり,大きなアーク体積が得られていることも示している。外部磁場の印加やプラズマガス流量によって,プロセスの目的に応じたアークを生成できることを明らかにしている。

第5章「Liquid waste destruction by long DC arc」では,難分解性液体廃棄物であるPCBのモデル物質であるビフェニル溶液を用いてロングDCアークによる分解実験を行い,分解後に生成した気体,液体,固体を定性・定量分析することによって,ビフェニル溶液の分解機構の検討を行っている。分解後の気体はH2,CO,CH4が主であり,液体中にはベンゼン,メチルベンゼン,エチニルベンゼンなどが副生成物として存在していることから,分解後の低温領域において生成するフェニルラジカルが副生成物の生成に重要であることを明らかにしている。アーク中に酸素を供給すると99.8%のビフェニルの分解率を得ることができたことから,酸素ラジカルによるビフェニル分解がロングDCアークでは効率的であることを示している。

第6章「Conclusions」では,本研究の成果を総括し,今後の展望を述べている。

以上を要するに,本研究では水プラズマジェットの放電特性を明らかにし,プラズマ体積が大きく,プラズマ中の処理物質の滞留時間が長いロングDCアークの放電現象の解析結果をもとにして,難分解性液体廃棄物を分解する方法を開発し,その分解機構を解明したものであり,工学上ならびに工業上貢献することが大きい。よって本論文は博士(工学)の学位論文として十分な価値があるものと認められる。


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