| ホーム | 渡辺教授 | 研究 | 業績 | 装置 | メンバー | 卒業生 | 学生業績 | 講義 | 学会報告 | 入学希望者 | トピックス |

 
日本学術振興会 
プラズマ材料科学賞(奨励部門) (2000.6)

 

[業績]熱プラズマ流のモデリング

(Modeling of Thermal Plasma Flows)

渡辺氏は熱プラズマ流に関する様々なモデリング手法を開発し、熱プラズマ中の反応性ガスの挙動や、プラズマと粉体との反応機構等を解明するための研究を行ってきた。特に反応性高周波熱プラズマや直流アークの数値解析、熱プラズマ中の粉体の挙動、熱プラズマ中の超微粒子の生成過程、プラズマ溶射における溶射液滴等に関するモデリング手法を開発し、熱プラズマを用いた材料プロセシングの発展に貢献している。以下に代表的な成果を列挙する。

1. 高周波熱プラズマ流のモデリング:熱プラズマ中では水素、酸素、窒素等の解離・再結合反応に関しては熱平衡が成立しない場合がある。よって熱プラズマのモデリングでは化学反応速度を考慮し、さらに多数の化学種による物性値を推算して数値解析を行うことが必要である。渡辺氏は数値解析により高周波熱プラズマの速度、温度、濃度分布を求め、プラズマ中の各種の反応性ガスの挙動を調べるモデリング手法を開発した。このモデリングにより、各種の材料プロセシングに適したガスの供給方法を検討し、またプラズマ中の酸素や水素はほぼ平衡組成に近いが窒素は平衡組成から大きくずれていることを明らかにした。

2. 高周波熱プラズマ中の微粒子の挙動のモデリング:熱プラズマによる粒子の球状化、粒子の窒化や酸化処理、超微粒子の合成等における材料プロセシングでは、熱プラズマ中に供給した粉体の挙動を調べることが重要である。渡辺氏は高周波熱プラズマ中に供給した炭化チタン粉体の挙動の数値解析を行った。炭化チタン粉体の平均径(1.35 mm)がプラズマの平均自由行程と同程度となるので、このモデリングでは希薄流体モデルが適用されている。このモデリングにより、プラズマ中における炭化チタン粉体の窒化に関する反応機構を解明した。さらに渡辺氏は、高周波熱プラズマ中における超微粒子の生成過程のモデリング手法も開発した。このモデリングにより、高周波熱プラズマ中に供給したアルミニウム粉体が蒸発してアルミナ超微粒子を生成する機構を解明した。

3. プラズマ溶射液滴のモデリング:プラズマ溶射によって作製される溶射被膜の特性は、基板上における溶射液滴の挙動に大きく依存する。基板上では溶射液滴の変形と凝固が同時に起こる複雑なプロセスであるが、渡辺氏は溶射液滴の変形と凝固に関するモデリング手法を開発し、溶射液滴の変形率、および変形過程と凝固過程に必要な時間を推算するための一般化された相関式を提案した。これらの結果は、プラズマ溶射における液滴の挙動を解析するために重要である。