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論文題目「多相アークを用いたインフライト溶融によるガラス製造」

八田和之

インフライト溶融技術は造粒したガラス原料を熱プラズマ中で瞬時に溶融する技術であり,現行技術と比較して溶融炉の小型化と消費エネルギーの大幅な削減が可能となる.本研究ではこのインフライト溶融技術に用いる高温場の検討を行っており,他の熱プラズマよりエネルギー効率の優れる多相アークに着目した.多相アークはプラズマの直径が約100 mmと大きいために粉体を効率良く処理でき,ガラス原料の溶融に適していると考えられる.しかし, 多相アークは世界的にあまり利用実績がなく,その特性についても解明されていない.よって,本研究では多相アークの特性を解明することを目的とし,多相アークの温度・速度分布の測定,放電現象の観察,及び多相アークを用いたガラス原料の溶融実験を行った.

熱プラズマの診断が可能なエンタルピープローブを用いて6相アークの測定を行うことで,多相アークの温度,速度における特徴を解明することができた.多相アークは電極間の中心のプラズマ温度が約7600 Kと高く,プラズマの速度が約20 m/sと遅いため,ガラス原料のインフライト溶融処理に適していることが考えられる.また,アルゴンシールドガス流量を少なくすることで,温度分布が半径方向に均一となることがわかった.

高速度ビデオカメラを用いて多相アーク放電の様子を観察することで,アーク放電の挙動を知ることができた.多相アーク放電はアーク経路に周期毎の変動がなく,安定な放電が維持されていることがわかった.また,多相アークのアーク経路は,各々の電極にかかる電位を考えた時の電極配置の対称性,及び12本の電極における放電の順番の規則性によって決定されることが示唆された.さらに,電極配置を操作することで,電極間における高温領域を制御できることがわかった.

多相アークを用いたガラス原料の溶融実験を,プラズマ及び原料供給の条件を様々に変化させて行うことで,インフライト溶融における基礎データを得ることができた.多相アークはその他の熱源と比較して,供給量の多い条件でも高いガラス化率を得られており,今後の検討によって高効率,短時間でのガラス製造が可能になると考えられる.

多相アークを用いたインフライト溶融技術のさらなる発展には,多相アークの周波数を上げる,及び多相アークにガラス粒子を投入した時の個々の粒子の熱履歴を評価する必要があると考えられる.

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