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論文題目「誘導結合型熱プラズマによる立方晶窒化ホウ素の合成」

左高良一


立方晶窒化ホウ素(c-BN)は,ダイヤモンドに次ぐ硬さと高い熱伝導率を持ち、また高温下において鉄系材料との反応性が小さいことから切削工具向けの新たなコーティング材として期待されている。しかし既存のc-BN合成方法では、原料ガスとしてB2H6、BF3などの毒性、腐食性や爆発性を有するものが多く工業的応用が困難である。

熱プラズマは、被熱物体を容易に加熱し、高融点物質であっても瞬時に蒸発させることができることから、c-BNのような高融点物質の合成に有効であると考えられる。本研究の目的は,大気圧下で誘導結合型熱プラズマを用い、Ar-N2あるいはAr-NH3プラズマ中において、安全な原料であるh-BN粉体を用いてc-BNを合成することである。また、バイアス電圧の印加や回収位置、窒素及びアンモニアの供給方法に着目し、c-BNの生成メカニズムの検討も行った。

実験装置は熱プラズマ中に原料粉体を供給するためのセンターノズルと、生成物を回収するための水冷された銅コイルが設けられており、銅コイルは可動式となっている。Ar-N2プラズマ中に、平均粒径10 μmの原料粉体h-BNをキャリアガスを用いて供給し、銅コイル上に堆積した粉体を回収した。バイアス電圧を印加する場合、センターノズルを陽極、銅コイルを陰極とした。N2はシースガスとして1〜3 L/min供給し、粉体供給速度は0.02 g/minとした。銅コイルによる回収位置は、センターノズルから20〜100 mmに設置し、センターノズルと銅コイルの距離を離すことにより、バイアス電圧を20〜50 Vと変化させた。銅コイルがセンターノズルに近づくに従って、回収部付近のプラズマの温度は高くなり、センターノズルから20 mmにおいては、9000〜10000 Kになる。生成物の結晶構造同定にはX線回折、元素分析にはX線光電子分光法(XPS)を用いた。

c-BNの生成におよぼすバイアス電圧の影響を調べた。c-BNの生成割合はX線回折分析を行いc-BN/h-BNのピーク比から求めた。また、これまでの研究から、B/Nの値はc-BNの生成時には1に近い値をとる傾向を示す。B/N比はXPSの測定より算出した。バイアス電圧が20〜40 V増加するにつれて、c-BNの割合も増加した。それに伴いB/N比は1に近づく傾向を示した。バイアス電圧の印加は、c-BNの形成を促す効果および窒化反応を促す効果があると考えられる。現在の実験条件においては、最もバイアス電圧を高くすることができる、センターノズルから100 mmが最適な回収位置であることがわかった。


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