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論文題目「熱プラズマを用いたインフライト溶融によるガラス製造

親松泰子

工業的なガラス製造プロセスでは、ガラス原料を数百トン規模の巨大な炉の中に投入し、数日間かけて溶融・清澄させるため大量のエネルギーを消費している。一方、ガラス原料を小型のルツボに入れてガラスを作製する場合には2時間程度の加熱でガラス化が完了する。工業的なプロセスが長時間化する要因として、炭酸塩などの易溶融成分が先に溶融して難溶融成分であるSiO2が濃縮し、溶融後の融液を均質化する時間が必要であるためと、ガラス化反応中に発生した融液内のCO2の脱泡、清澄に時間がかかるためであると考えられる。消費エネルギー削減のために新しいガラス製造プロセスの確立が望まれており、ガラス原料の組成を持つ粒子を造粒して、これを高温場でインフライト溶融し、ガラス化する方法が提案されている。粒子単位でガラス化するため、融液を形成する段階ですでに均質化されている。また、気泡の原因となるCO2が飛翔中に放出されることで清澄時間が短縮され、大幅な消費エネルギーの削減が期待できる。一例として、酸素バーナーを用いたインフライト溶融によるガラス製造が実現した場合、エネルギー削減率は現行技術の60%であると推算されている。

本研究の目的はインフライト溶融プロセスの工業的なガラス製造への応用の可能性を調査することと、インフライト溶融では粒子への熱移動が重要であるためプラズマ中の粒子の挙動を明らかにすることである。インフライト溶融プロセスでは、ごく短時間に粒子を昇温しガラス化させるためプラズマなどの高温場を用いる必要がある。本研究ではRFプラズマ装置、多相アーク装置、酸素バーナーを用いた。

実験の結果、各装置でインフライト溶融により高いガラス化率を得ることができた。また回収したガラス粒子を分析し、粒子内にCO2を含まないことを確認した。インフライト溶融後はガラスの成分の一部が揮発しガラスの組成が変化していたが、蒸発しやすい成分を造粒段階で多く入れることによって組成の変動を抑えることができると考えられる。さらに滞留時間によって原料粒径を選択することで粒子への伝熱量を制御し、組成の変動を抑えることが可能であるという結果を得た。よって、インフライト溶融プロセスが工業的なガラス製造に応用可能であることがわかった。

数値解析では溶融後の粒径分布や粒子への熱移動量を求め、実験とほぼ同じ傾向の結果が得られた。よって、今後ガラス製造に適切な溶融条件の設定や、スケールアップの検討に数値解析を用いることができると考えられる。


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