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論文題目「誘導結合型熱プラズマによる金属シリサイド超微粒子の生成

奥宮秀昭

金属シリサイド超微粒子が効率良く生成するためにはMo-Si系の実験結果から、高沸点金属が核生成してから固相となる前に急冷による捕集が必要である。Mo-Si系においては急冷位置による生成量の違いがあった程度で、シリサイド超微粒子は効率よく合成されている。しかしMoよりも更に蒸気圧の低い金属とSiとのシリサイド超微粒子を合成するには、その高沸点物質の核生成温度を考慮して急冷捕集をより高い温度領域で行う必要がある。また高沸点金属が核生成をする前に急冷による捕集を行えばさらに良い合成条件となることが予想される。しかし、急冷コイル表面の温度があまりにも高い場合においてはコイル材料との反応が問題となり、コイル表面の温度境界層内で核生成が起こる場合においては、超微粒子捕集や凝縮プロセス等に何らかの問題が出てくることも考えられる。材料に合った適切な温度領域で捕集することが重要となる。

Ti-Si系、Co-Si系およびFe-Si系のように、一方の金属が液相状態の時に他方の金属が核生成を開始するときは、合成条件として良い。これらの系においても高沸点金属が核生成をする前に急冷による捕集を行えばさらに良い合成条件となることが予想される。

Mn-Si系のように、2成分それぞれの核生成温度から融点までの温度領域が極端に異なる場合、つまり一方の金属が固相状態になってから、他方が核生成を開始するときは金属間化合物の合成は難しいと考えられる。しかし本実験においてはSiが固相となる前にMnが固溶しており、104程度の蒸気圧比ならば金属間化合物超微粒子は合成できる。この系でもSiが核生成をする前に急冷による捕集を行えばさらに良い合成条件となることが予想される。

金属シリサイド超微粒子の単相合成は難しく、本実験でもCo-Si系においてのみ単相に近いCoSi2が得られた。単相を得るには、混合金属蒸気の組成が相図において金属間化合物の生成する組成と一致していることが必要である。しかし実験における混合金属蒸気はその核生成温度の違いから、その蒸気組成にある程度幅を持ってしまう。そのため蒸気組成を量論組成に制御することが困難である。ところが本実験のような超微粒子合成の場合、数nmという超微粒子中に共晶や包晶組織のような複雑な相ができるとは考えにくく、液相微粒子中に固相が生じると、微粒子はそれと同一構造の固相でほとんどが占められてしまうと考えられる。相図から見て最初に固相が出現する組成はある領域を持っている。故に金属混合蒸気の組成が金属間化合物の量論組成に対して多少の変動があっても合成は可能である。このことから、相図から見て液相微粒子中に目的の化合物が最初に固相となる領域が広い系ほど、単相合成の可能性がある。

次に粉体供給量変化に対する金属シリサイド超微粒子合成の難易について、実験結果および数値解析結果を用いて考察する。数値計算において本実験条件におけるSi以外の金属の核生成温度は融点近傍であった。またMo-Si系やMn-Si系では、MoやMnのようなSiとの蒸気圧差が大きい金属は、核生成温度がSiの液相温度領域(Siの核生成温度から融点までの温度領域)から大きくはずれている。実験結果を見ると、供給量を増加させた時に、シリサイド超微粒子の生成量は減少傾向を示した。このような場合には粉体供給量を大幅に増加させることで、金属蒸気の分圧を高め、一方の核生成温度を他方の融点以上にする。こうして2成分が共に液相状態で存在する領域を広くすることで、シリサイド超微粒子の合成は更に効率がよくなると考えられる。ただこのとき問題となるのが、粉体供給量を大幅に増加させると、本実験方法では蒸気圧の低い金属において、未蒸発成分が残ってしまう。改善策としては、プラズマトーチ内のシースガスに金属とは反応しない水素を混合することが挙げられる。水素の混合によって、その解離エネルギー分のパワーをプラズマに供給できるので、プラズマの高温領域を広くすることで未蒸発成分を無くすことができる。

以上の考察より、金属シリサイド超微粒子を合成する条件として、2成分の高融点における蒸気圧比が7×104〜8×10-3であり、それ以上ならば本実験条件よりも高い温度領域で急冷し、それ以下ならば、本実験以上の急冷速度が得られれば合成可能であると考えられる。また高沸点金属が核生成をする前に、適切な温度領域で急冷による捕集を行えばさらに良い合成条件となることが予想される。さらに、核生成温度が融点以上で2成分の金属液相粒子が共に存在する温度領域が広いこと、相図から見て金属間化合物の生成可能領域が広いことが挙げられる。


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