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論文題目「プラズマ蒸発法によるカーボンナノチューブの生成」

能登谷孝弘

カーボンナノチューブ(CNT)の成長における添加金属の影響には不明な点が多く残っている。本研究では、DCプラズマジェット蒸発法、および高周波誘導結合型(RF)熱プラズマ蒸発法によってCNTを合成し、添加金属の影響について検討した。使用した金属はNi、Co、Fe、Mo、LaB6、およびそれらの組み合わせである。

DCプラズマジェット蒸発法では、金属の種類、濃度に関わらずCNTの生成量は少量であった。これは、試料回収部の温度がCNTの成長に適さなかったためである。

RF熱プラズマ蒸発法では、試料回収部が1400 K程度で、原料にNi、Ni-Co、Ni-Fe、およびNi-LaB6を添加した場合、CNTが多量に生成された。その他の金属を単独で添加した場合は、試料回収部が1400 Kの場合でもCNTはほとんど生成されなかった。単一金属ではNiを10 wt%添加したときが最も多量のCNTが生成されることがわかった。また、混合金属の添加により、Ni単一の場合より多量のCNTが生成された。この結果から、CNTの成長は凝縮過程、および金属の種類に依存していることがわかる。

凝縮過程における蒸発種の冷却速度の影響について検討したが、冷却速度とCNTの生成条件に相関が見られず、冷却速度はCNTの成長に重要な因子でないと判断した。また、金属の影響はCNTの成長機構とあわせて検討した。不均一凝縮モデルでは、各金属の均一核生成温度に着目した。その結果、Moに関しては均一核生成温度が高く、炭素の不均一凝縮が効率よく起こらないために活性が低いと考えられる。混合溶融物モデルでは、炭素の金属に対する溶解度、および炭化物形成の影響について考察した。その結果、冷却過程での炭素の金属への溶解度の急激な低下が炭素を大量に析出させ、CNTの成長を促進させると考えた。また、Ni以外の単一金属では冷却過程で炭化物を形成しやすいため、CNTの成長が阻害されると考えた。CNTの合成に有効な金属に必要な要因として、?金属の均一核生成温度が炭素の不均一凝縮に適当であること?炭素の金属への溶解度が温度低下に対して急激に低下すること?炭化物を形成しにくい金属であることなどが挙げられる。

CNTの成長に影響する因子は複数存在し、そのいくつかを満たす金属がCNT成長に高い活性を示す。大量のCNTを生成させた混合金属は、これらの要因を多く満たしていると考えられる。


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