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論文題目「大気圧非平衡プラズマによる液晶パネルからのインジウム回収プロセスの開発」

インジウムは液晶ディスプレイ中に含まれる透明電極ITO(インジウムスズ酸化物)として用いられている。しかし,インジウムは希少な金属であり将来的に安定した生産が期待できず,廃液晶パネルからインジウムを回収する技術が求められている。現在の回収技術は湿式プロセスが中心であるが,プロセスの多段化や廃薬品などの問題がある。本研究の目的は,新しい乾式プロセスとして,大気圧非平衡プラズマを用いたインジウムの回収技術を確立することである。

大気圧非平衡プラズマの発生方式として、誘電体バリア放電を用いた。本研究では、液晶パネル試料として、ガラス基板上にカラーフィルター(CF)、ITOが蒸着されたCF glass、ガラス基板上にITOのみが蒸着されたITO glassを使用した。プラズマ処理によるインジウムの除去および回収を行った。インジウムの除去では、プラズマガスとしてそれぞれ窒素、乾燥空気、アルゴン、ヘリウムを用い、大気圧に保ちつつ所定の流量で反応器内へ導入した。反応容器内に平板型電極を設置し、上下電極の下部に誘電体を設置し、誘電体上に試料を設置することでプラズマ処理を行った。この試料設置条件の場合、上部電極と、試料表面のITO(導電物)が対向するため電極-試料間で放電が集中して発生する。しかし、ヘリウムガスの場合そのような放電は起こらなかった。この場合、2分間の処理で70%程度の高い除去率を得た。また、ヘリウムではインジウムはほとんど除去されなかった。逆に、上部にも誘電体を設置した場合、30分処理で30%程度の低い除去率となった。プラズマガス、誘電体の設置条件による放電形態の違いによって除去率が大きく変わることがわかった。しかし、ITO glassの処理においては放電形態にかかわらず、インジウムはほとんど除去されなかった。また、どの条件においてもインジウムとスズの選択的な除去は困難であった。インジウムの回収は反応容器の排気部分にフィルターを設置することで行った。CF glassを窒素プラズマにより処理を行い、フィルターの回収物をXRDによる同定を行った。回折線のピークから回収物は、酸化インジウム(III)である可能性が高いことが分かった。また最大で15%の回収率を得た。

インジウム回収プロセスにおいて、プラズマの放電形態により、除去機構が変わり、除去率および回収率に影響を及ぼすことがわかった。


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