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論文題目「熱プラズマによる廃イオン交換樹脂の処理」

原子炉等で発生する放射性核種の浄化処理に用いられたイオン交換樹脂は、放射能を持つCoやCs等を吸着している。イオン交換樹脂は難燃性のため、廃樹脂として施設内貯蔵されるが、貯蔵場所の確保の困難さから、減容・安定化処理が必要である。本研究では、熱プラズマの10,000K程度の高温に加え、プラズマ中で解離した酸素の高活性に注目した。酸素を反応性ガスとした熱プラズマによる廃樹脂の高速な減容化と、放射性核種の酸化・安定化を目的として、樹脂および吸着金属の挙動を検討した。

強酸性陽イオン交換樹脂に、CoおよびCsを吸着させ、大気圧下でプラズマ処理を行った。実験パラメータとして処理時間、ガス組成、反応性ガス種類等を変化させた。プラズマガスはアルゴンを用い、プラズマの高温部分に酸素、あるいは空気を反応性ガスとして供給した。サンプル重量は5、10、20gでそれぞれ実験を行った。処理後のサンプルは赤外吸収スペクトル法(FT-IR)、誘導プラズマ発光分析(ICP)、原子吸光分析、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)等で分析した。

プラズマ処理により、廃樹脂の重量は処理時間と共に大きく減少し、樹脂および金属を吸着した樹脂において、処理時間10分で80%以上の減少率を得た。アルゴンと酸素のガス流量が共に18L/min、60分間の処理において、重量減少率は90%以上、体積減少率は約80%となった。反応性ガスとして空気を用いた場合、反応性ガスが酸素の時に比べ、重量減少が小さくなった。プラズマ処理後のサンプルのFT-IRによる分析結果から、条件に関わらず処理時間20分で陽イオン交換樹脂のスルホン基のピークが消失していたことから、樹脂の分解は時間と共に進行し、スルホン酸基は処理時間20分以内に分解することがわかった。CoおよびCsを吸着させた樹脂の、60分処理後におけるXRD分析結果から、Coの場合はCoO、Co3O4が、Csの場合はCs2SO4のみが生成することがわかった。アルゴンのみで処理を行った場合、Coは酸化物を生成せず、CsはわずかだがCs2SO4を生成した。また、ICPおよび原子吸光分析結果から、Coの保持率はほぼ100%であるが、Csは酸素流量が18L/minの場合においては、時間と共にわずかに保持率が下がることがわかった。以上の結果から、酸素または空気を反応性ガスとすることで廃樹脂の減容率は大きくなり、Coは酸化物を生成しほぼ100%が残渣中に含まれることがわかった。しかし、Csは硫酸化物を生成するが、その蒸気圧の高さから100%を残渣中にとどめることは難しいと考えられる。


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