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論文題目「高周波誘導熱プラズマを用いた球状微粉末の作製」

小林法夫

高周波誘導熱プラズマは1万度以上の超高温領域を有し、尾炎部で急冷される。そのため、プラズマ中に金属粉末を注入すると、超高温領域で蒸発したのち、尾炎部で均一核生成および不均一凝縮過程を経てナノ粒子が容易に合成できる。

そこで、プラズマ中に銅粉末を供給し蒸発させ、気相から微粉末を生成させるプロセスについて検討した。プラズマ発生条件、粉末供給条件などを変化させることにより、プラズマから粒子への熱移動量や冷却速度、気相中の蒸気濃度といったプラズマ−固体粒子間の相互作用因子を変えて、生成粉末の粒径や粒度分布などの制御を試みる。

本研究では、比較的低融点である銅粉末をアルゴン−水素プラズマ処理して金属蒸気濃度を高くすることで、生成粒子を粒径約0.1μmまで成長させた。また、銅微粉末を高融点タングステン金属と複合化して、焼結開始温度を積層セラミックコンデンサの内部電極材料として利用可能な400℃以上まで上昇することを目的とした。

まず、銅の粉末供給速度の生成粒子径への影響を調べるために、粉末供給速度を変化させて実験を行った。粉末供給速度を増加させると、蒸発割合は減少するが、総蒸発量は増加した。総蒸発量が増加したので、気相中の蒸気濃度が上昇し、生成粉末の平均粒径は約0.05mmから0.28mmまで大きくなった。

次に、プラズマ雰囲気による生成粒子の粒径への影響を調べるために、プラズマガス中の水素量を変化させて実験を行った。熱伝導度の大きい水素を加えることにより原料粉末に与える熱量が増加する。水素添加量を増加させると、蒸気濃度が上昇し、この結果、生成粉末の粒径が増大した。

また、圧力による生成粒子の粒径への影響を調べるために圧力を変化させて実験を行った。この条件では、プラズマの高温領域の体積と滞在時間が競合するので原料の蒸発量と圧力の相関は単純ではないが、蒸気濃度の上昇と生成粉末の粒径に対応が認められた。

次に、融点が著しく異なる銅−タングステン系では、タングステン源として金属タングステンに比べて低融点の酸化タングステンの還元反応を利用した。生成した粉末はタングステンナノ粒子が銅粒子表面に担持した構造になった。タングステンの添加量が多いほど焼結開始温度は高温側へ移行した。この複合粉末の焼結開始温度は400℃以上となったので、積層セラミックスコンデンサ用内部電極材料としての応用が期待できる。

研究業績は「小林の博士論文概要」をご覧ください.