ハロンはガス系消火剤として幅広く使用されてきたが、近年、オゾン層破壊物質であることが知られるようになり、生産と使用が規制されるようになった。今後、使用されないハロンが大量に発生するため、適切な処理を行う必要がある。
本研究では、ハロンの処理法として乾式熱分解法を考えた。これは、高温に加熱した固体吸着材にハロンを通すことにより、ハロンを分解させ、同時に有害生成ガスを吸着材に吸着させる方法である。この方法では排ガスに有害生成ガスが含まれず、排ガスの処理が必要なくなることが期待できる。本研究では、乾式熱分解法によるハロンの無害化処理が可能であるかを検討し、その上で、反応機構を検討することを目的とした。処理対象ガスは、ハロンの中で代表的なハロン1301
(CBrF3) とした。
固体吸着材として、焼成石灰石 (CaO)、焼成ドロマイト (CaO、MgO)、焼成ブルーサイト (MgO) を使用した。実験に使用した吸着材は粒径2〜4
mm、41.80 gである。反応管に吸着材を充填したものを電気炉で加熱状態にして、上部からハロンを導入した。ハロン流量は80 ml/minとした。
試験後の吸着材のX線分析より、ハロンに含まれる臭素、フッ素はCaF2、CaFBr、MgF2、MgBr2として固定化されることが分かった。焼成ドロマイトでは、構成成分であるCaOとMgOのうち、MgOに関する生成物は検出されなかった。これより、吸着材中にCaO、MgOが共存する場合、臭素、フッ素は選択的にCaOと反応することが分かった。また、吸着材にMgOが含まれることにより、細孔が生成物で覆われるのを防ぎ、反応をより内部まで進めることが分かった。1073
Kで、焼成石灰石、焼成ドロマイトを用いることで、ハロンに含まれる臭素を完全に吸着させることができた。これより、本方法によりハロンの完全分解が可能であることが分かった。臭素とMgOの反応性は悪く、臭素の完全吸着にはCaOが必要である。ハロンに含まれるフッ素は焼成ドロマイト、焼成ブルーサイトを用いることで1173
Kで95 %以上吸着させることができた。吸着されないフッ素はCF4、C2F6となり排ガスとしてでる。CaOの比率の高い吸着材を用いると、フッ素の吸着量は減少した。これは、反応に伴い生成する難分解性のCF4の生成によるものであることが分かった。
研究論文
- 竹内章浩, 赤塚義正, 加藤修一, 渡辺隆行: 固体吸収材を用いたハロンの高温分解処理, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, 8 (292), p.213-220
(2001.5).
- Akihiro Takeuchi, Syuuichi Kato, Takayuki Watanabe, and Yoshimasa Akatsuka:
Effect of Solid Reactant Condition on Adsorption on Halon Decomposition
Gases, Journals of Chemical Engineering of Japan, 35 (3), p.234-240 (2002.3).
- Akihiro Takeuchi, Shuichi Kato, and Takayuki Watanabe: Effect of MgO Concentration in Solid Reactants on Decomposition Treatment
of Halon 1301, Chemical Engineering Communication, 191 (12), p.1671-1685 (2004.12).
- 竹内章浩, 田中頼彦, 加藤修一, 渡辺隆行: ハロン分解ガスの吸着に及ぼす固体吸着材組成の影響, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, 12 (315), p.97-105
(2005.3).
国際学会
- Akihiro Takeuchi, Syuuichi Kato, Takayuki Watanabe, and Yoshimasa Akatsuka:
Reaction Consideration between Halon and Solid Alkaline under High Temperature
Conditions, Proceedings of 6th World Congress on Chemical Engineering, P2-012 (2001.9
Melbourne, Australia).
- Syuuichi Kato, Akihiro Takeuchi, and Takayuki Watanabe: Integrated Process for Disposal of Halon 1301 (CBrF3) with Calcined Dolomites
and Limestones, Proceedings of 6th World Congress on Chemical Engineering, P1-015 (2001.9
Melbourne, Australia).
国内学会
- 加藤修一, 渡辺隆行, 竹内章浩, 赤塚義正, 角田 寛, 西川治光, 相藤 茂, 村上達夫, 古田貴之: ハロン分解および処理に関する検討,
化学工学会第33回秋季大会研究発表講演要旨集, W208 (2000.9 静岡大学).
- 竹内章浩, 加藤修一, 渡辺隆行, 赤塚義正: ハロンの乾式分解処理における吸収材の影響, 化学工学会第66年会研究発表講演要旨集, F106
(2001.4 広島大学).
- 竹内章浩, 田中頼彦, 加藤修一, 渡辺隆行: ハロン分解処理におけるドロマイト中のMgOの効果, 化学工学会第67年会研究発表講演要旨集,
S116 (2002.3 福岡工業大学).