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論文題目「タンニンゲルによる硝酸水溶液からの貴金属の吸着分離」

神田晴香

貴金属などの希少資源の安定供給確保のために,廃製品中からの資源回収技術の開発が求められている.天然由来のタンニンをゲル化したタンニンゲル(TG)を用いた研究を含む既報の貴金属回収の研究では,主に塩酸酸性水溶液からの回収を対象としているが,実際の湿式プロセスでは,スクラップからの貴金属の溶出に塩酸だけでなく硝酸も使用されている.そこで本論文では,TGおよびTGにアミン基を導入したアミン基修飾タンニンゲル(ATG)を用いた硝酸酸性水溶液からのPd(II)およびPt(II)の吸着分離について検討を行った.

第1章は序論であり,本研究の背景や既往の研究,本研究の目的について述べた.

第2章では,硝酸中におけるTGのPd(II)吸着特性について検討を行っており,TGによるPd(II)吸着量は硝酸濃度0.1から0.5 Mにかけて減少するが,さらに硝酸濃度が高くなると増大することを明らかにした.また,硝酸の酸化作用によってTG中に貴金属と安定な錯体を形成するカルボニル基が生成することが,Pd(II)吸着挙動に大きな影響を及ぼしていることも明らかにした.

第3章では,硝酸中におけるATGのPd(II)吸着特性の検討を行い,ATGのPd(II)吸着量がTGよりも大きいこと,およびATGの硝酸に対する耐性がTGよりも高いことを明らかにした.

第4章では,溶液の水素イオン濃度または硝酸イオン濃度がTGおよびATGのPd(II)吸着量に及ぼす影響について検討し,水素イオン濃度が上昇するとPd(II)吸着量は減少するが,硝酸イオン濃度が上昇しても吸着量はほとんど変化しないことを明らかにした.

第5章では,TG中のヒドロキシル基を第二級アミノ基であるメチルアミン基またはエチルアミン基で置換したMATGおよびEATGをそれぞれ作製し,ATGとPd(II)吸着挙動の比較を行った.第二級アミノ基はアミン基よりも求核性が高いため,Pd(II)吸着量の増加が期待されたが,アルキル基の立体障害の影響が大きく,MATGおよびEATGの吸着量はATGと同程度またはそれ以下となることを明らかにした.

第6章では,ATGを用いた硝酸中におけるPt(II)吸着実験を行い,ATGにより硝酸中においてPt(II)も吸着可能であるが,その吸着量はPd(II)よりも小さいことを明らかにした.さらに,ATGを用いたPd(II)とPt(II)の混合硝酸溶液における吸着実験を行い,Pd(II)を選択的に吸着分離することに成功した.

第7章では,各章で得られた結果について考察し,本研究の総括を行った.

2010年11月 第24回日本吸着学会研究発表会で最優秀ポスター賞を受賞しました.



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