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論文題目「直流アークプラズマによる金属シリサイド超微粒子の生成」

伊藤 肇

シリサイドとは金属とシリコンとの金属間化合物を表す。金属間化合物はその成分単体では見られないような特性を示すことが多く、機能性材料として注目されている。金属成分とシリコン成分に蒸気圧の違いがあり、アーク加熱によって、混合蒸気を得る場合に問題となる。プラズマガス中に水素ガスを導入することによって、この問題の克服を行った。また、水素−アルゴンアークを用いた金属−シリコン混合物の蒸発機構を解明することを目的としている。

シリサイドの応用先として、TiSi2、MoSi2、V Si2は電気伝導性に優れるため、LSIの電極材料として用いられている。また、Ti5Si3、MoSi2は融点が高いため、将来の耐熱材料として期待されている。

各成分を任意組成に混合し一軸成型によって、直径20mm、高さ8mmの錠剤にして実験に用いた。銅製陽極に試料を置き、試料を陽極として電極間にアークを発生させ、超微粒子を生成した。実験条件は、アーク電流200A、アーク電圧30V、圧力は大気圧とした。

本研究で行った分析方法は、生成した金属間化合物超微粒子に関して、EDX(エネルギー分散型X線分析)を用いて組成を調べ、XRD(X線回折)を用いて化学種の同定を行い、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、超微粒子の形状を調べ、粒子径の分布を測定した。

その他に、放電前後の試料重量を秤量することで蒸発量を求め、放電時間で割ることで、蒸発速度を求め、プラズマの発光スペクトルを測定することで蒸発種を同定した。

本研究で以下のような結言を得た。
水素50 %、Ti初期組成60wt%のとき、最もTiSi2超微粒子が生成できた。そのとき、放電時間は15 min程度が適当である。水素50 %、Ti初期組成76 wt%のとき、Ti5Si3超微粒子のみが生成できた。28%アンモニア水溶液で生成した金属間化合物超微粒子を処理することによって未反応Siを完全に除去できた。
水素50%、Mo初期組成85wt%のとき、最もMoSi2超微粒子が生成された。
水素50%、V初期組成60wt%のとき、最もVSi2が生成された。水素50%、V初期組成76wt%のとき、V5Si3超微粒子のみが生成された。

アークプラズマによる、2元系金属混合物の蒸発機構は、金属成分の水素との親和性による影響を受け、水素との親和性が高いものほど蒸発が促進される。蒸発過程において水素化物が生成されている可能性がある。


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