食品の腐敗防止に用いられている殺菌法は熱、紫外線、薬剤などによるものがある。薬剤を用いた殺菌ではその毒性の問題があり、熱による殺菌ではエネルギーの浪費やタンパク質の変性による味の低下などが問題となる。そこで本研究では低温条件下での新しい殺菌法として、無声放電を利用することを試みた。
放電現象を利用した殺菌方法としては高電圧気中パルスを用いた研究があるが、まだ無声放電を利用した殺菌に関する研究はない。本研究の目的は、無声放電で電気的処理と化学的処理を施すことによる大腸菌の殺菌の可能性およびその特性を調べ、またどのような機構によって殺菌されるのかを調べることである。
無声放電は電極間に誘電体を挟んだ交流放電で、誘電体層により電流が制限されるため温度上昇を伴わない。この放電を用いる利点としては、大気圧下の処理なので真空装置が不要であること、放電装置の構造が非常に簡単であること、加えるエネルギーが小さいことである。
空気放電および窒素放電では生成する化学種(窒素酸化物、オゾン)のみでは殺菌効果のすべては説明できない。菌体に電流を流すことにより、菌体に非致死的損傷を与えることが報告されていることから、その損傷に対して化学種が効果的に働くことが考えられる。
研究論文
国内学会