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論文題目「インフライト溶融ガラス製造に用いる多相交流アークの電極現象の解析」

池場友樹

 多相交流アークはプラズマ体積が大きく,ガス流速が遅いという特長があることから,粉体の高温処理に優れており,特にガラス原料のインフライト溶融ガラス製造に関する研究が重点的に行われている.

しかし,多相交流アークは世界的に研究例が少なく,実用化に向けては,電極消耗の低減化が課題となっている.電極消耗現象を把握する上で,電極表面温度と電極近傍の金属蒸気観察は非常に重要となるが,アークからの強い発光により,放電中の温度計測は非常に困難である.さらに,多相交流アークでは,電極一本当たり交流20 msを1周期として時間変動するため,msオーダーの変動に追従可能な計測が必要となる.そこで本研究では,高速度ビデオカメラに適切な光学系を組合せることにより,msオーダーでの電極表面温度計測と電極近傍の蒸気観察を行い,電極消耗機構の解析を行うことを目的とした.

電極温度計測より,交流放電における陰極時と比較して陽極時は,電極温度が高く,溶融面積も大きくなることがわかった.これは陽極時において電子凝縮による発熱が生じるため,電極に流入する総熱量が陰極時と比較して大きいことに起因していると考えられる.また,放電相数を増加させると電極先端温度は減少し,電極溶融面積は増加する傾向が確認できた.これは,放電相数を増加させたことで相対的に放電点の移動範囲が広くなったことに起因すると考えられる.

電極近傍のタングステン蒸気観察より,交流放電におけるタングステン電極の蒸発は,主に陽極時に起きていることがわかった.また,電極近傍の酸素の発光に着目し,アルゴンに対する酸素の発光強度の相対値を測定した.放電相数増加に伴い相対強度も増加する.つまり放電相数が増加すると酸化しやすくなるという傾向が見られた.12相放電において相対強度が大きくなるのは,放電点の移動範囲が広範囲になり,周囲に存在している酸素を電極近傍に巻き込むためであると考えられる.

さらに詳細な電極消耗機構の解析を行うために,アルゴン流量を2, 5 L/minと変化させ,電極温度測定とタングステン蒸気観察の同期計測を行った.アルゴン流量が2 L/minの条件では,アークの緊縮が起き,放電点が固定化され,局所的な高温領域が形成されることが確認された.また,蒸発による電極消耗に加えて,液滴飛散を確認することができた.この液滴飛散量を画像解析により算出することで,低アルゴン流量条件下での電極消耗は,蒸発と液滴飛散が支配的であることがわかった.以上の実験結果から得られた知見をもとに,電極消耗機構に関する考察を行った.


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