論文題目「誘導結合型熱プラズマによるテトラフルオロエチレンの直接合成」
樋山禎介
既存のテトラフルオロエチレン(TFE)の合成方法は,CaF2を原料とした多段階プロセスである.さらに,製造工程において,オゾン層破壊ガスであるHCFC-22を経由するといった問題点があるため,シンプルかつ環境調和型の新規合成法の開発が課題である.本研究では,誘導結合型熱プラズマを利用した,CaF2とグラファイト混合粉体からのTFEの直接合成について検討を行った.また,CF4をリサイクルするために,CF4からTFEを製造するプロセスが研究されているため,このプラズマを利用して,CF4からの直接合成についても検討した.
CaF2とグラファイトの混合粉体からのTFEの直接合成の妥当性について熱力学的検討をした.その結果,平衡組成には,目的物質であるTFEは存在しないが,中間生成物であるCF,CF2は存在することからTFEが合成可能であると考えられる.
プラズマ発光分光分析により,CaF2とグラファイトの混合粉体から, CF,CF2の生成を確認することで,TFE合成について評価した.CF,CF2の発光が確認されたことから,CaF2の熱分解により遊離したFがCと直接反応していることがわかった.従って,TFEは合成されていると考えられる.また,プラズマフレーム中における高温反応場では,熱力学的平衡組成がほぼ成り立っていることがわかった.
TFEの合成実験を通して,CaF2とCの混合粉体からのTFE合成評価を行った.実験により得られた固体生成物の分析から,固体生成物はCF結合を有することがわかった.よって,低温部であるプラズマ下流部でも遊離したFとCは反応していることがわかった.また,Fが気体生成物として発生していることがわかった.この気体生成物がフルオロカーボンガスであると考えられることから,TFEが合成されていると考えられる.さらに,CF4とCの混合物からのTFEの直接合成について検討した.得られた固体生成物からTFEの重合物であるPTFEが確認されたことから,TFEが合成されていると考えられる.
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