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論文題目「大気圧非平衡プラズマによる廃プラスチック表面洗浄機構の解明」

新家正之

廃プラスチックのマテリアルリサイクルにおいて、異物混入による再生製品の品質低下を抑えるために、洗浄行程は非常に重要である。既往の湿式による洗浄方法では、廃液の処理や処理後の乾燥行程が必要とされるため、高コスト、低処理効率である上に、機能膜の除去は困難である。本研究では大気圧非平衡プラズマを用いて、プラズマ中の活性種生成の制御を行い、母材を傷めることなく、塗装膜のみを選択的に処理することを目的とした。

プラズマの発生には高周波パルス電源を用いた。パルス放電では、放電時と放電休止時における活性種の反応はそれぞれ異なる。パルス周波数(放電休止時間)を制御することにより、本研究ではプラズマ中に存在する活性種の種類や生成量を調節することができる。目的に応じた活性種の制御は重要であり、発光分光実験や、表面元素分析等の結果より、パルス周波数の変化によって、酸素ラジカルとオゾンの生成量を制御できることが考えられる。

本研究では、塗装が施された試料のプラズマ処理を行い、膜厚測定、XPSによる表面化学分析によってパルス周波数が試料表面に与える影響を検討した。パルス周波数が3〜5 kHzでプラズマ処理した結果、PSよりもPURのエッチング速度が大きく、母材であるPSを傷めることなく、塗装膜を選択的に処理できることが確認できた。放電休止時間の短い、パルス周波数10 kHzで処理を行った場合、エッチング速度が大きいために、処理の選択性を確認することができず、またXPSによる表面測定結果でも母材であるPSが過剰に酸化されていることがわかった。このことより、パルス周波数の増加に伴って酸素原子ラジカル発生量を増加させることができるが、過剰な酸素原子ラジカルの存在は、プラズマ処理において選択性を失い、酸化による母材の損傷を引き起こすことが考えられる。

高分子のエッチングを行うためには、高分子の主鎖が切断される必要がある。プラズマ中に存在する酸素原子ラジカルやオゾンが主鎖の切断に寄与する反応は高分子の種類によって異なっているため、パルス周波数によるプラズマ中の活性種の生成量の制御を行うことで、プラスチック処理に選択性を与えることができた。

本研究において、パルス周波数の制御によって塗装膜を選択的に除去することが可能であった。大気圧プラズマを用いた表面処理において、被処理物の性質や、処理の目的に応じて、プラズマ中の活性種をパルス周波数によって制御することで様々な分野に応用できることが考えられる。


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