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論文題目「Synthesis of Functional TiO2-Based Nanoparticles by Radio-Frequency Thermal Plasma Processing and Characterization」
(高周波熱プラズマ法による機能性酸化チタン系ナノ粒子の合成と特性評価
)

張 晨寧
(現在,物質・材料研究機構 特別研究員

本研究は、Ar/O2高周波熱プラズマ中へ前駆体溶液を噴霧することによる機能性酸化チタン系ナノ粒子(ニオブ添加酸化チタンナノ粒子、ニオブ・ユーロピウム同時添加酸化チタンナノ粒子、ニオブ・鉄同時添加酸化チタンナノ粒子)の合成に関するものである。前駆体溶液の仕込み組成通りに化学組成の緻密制御された粉末が、熱プラズマ法により合成されている。この元素添加法により、光触媒、光励起発光、磁気特性の観点から酸化チタン系ナノ粒子の機能化が達成されている。

第1章「General introduction」(緒言) では、熱プロズマの概略を説明し、酸化チタンナノ粒子の合成手法として既存のプロセスと比較したときの優位性について紹介した。

第2章「Synthesis of Nb5+-doped TiO2Nanopowders for Photocatalytic Property after Heat Treatment」(ニオブ添加酸化チタンナノ粒子の合成と熱処理後の光触媒特性) では、熱プラズマ法を用いると酸化チタンに対し固溶濃度25.0 at.%までのニオブ添加が可能であり、光触媒に有効であるアナターゼ相の生成が80%程度に促進されることを示した。ニオブ添加量を変化させた合成粉に対して、熱処理による相変態挙動、バンドギャップ変化、粒子間の結合性、および光触媒特性について評価した。アナターゼからルチルへの相変態は、Nb5+添加量の増加につれて抑制された。また、Nb5+添加は、熱処理による酸化チタンバンドギャップの狭小化を抑制し、高温における粒径を維持や粒子間の結合防止にも寄与した。ニオブを高濃度添加した酸化チタンは、紫外光下における光触媒特性が高温まで保持された。

第3章「Synthesis of Nb5+: Eu3+-Codoped TiO2Nanopowders for Photoluminescence and Photocatalytic Properties」(ニオブとユーロピウムを同時添加した酸化チタンナノ粒子の合成とその光励起発光特性および光触媒特性) では、合成した粉末は、主要相であるアナターゼ相(平均結晶子径45nm)とルチル相(平均結晶子径71nm)からなり、ルチル相の生成はEu3+添加により促進されたがNb5+添加により抑制されたことを示した。熱プラズマ法で合成した粉末は、大部分が多面体状の粒子(粒径数nm)であり、その他はほぼ球状の粒子(粒径150nm)から成っていた。合成粉のNb5+添加量を増やすと、5D0?7F2遷移に起因する欠陥を介在した発光の強度は低下し、5D0?7F2遷移に起因する発光の強度は増大した。Eu3+とNb5+の最適量添加により、紫外および可視光下でのいずれの光触媒活性も、Eu3+量に対しNb5+量が過不足の場合に比べ高い値を示した。プラズマ法で合成した粉末は、可視光領域おいて、ニオブのみを添加した粉やP25粉(市販の光触媒用酸化チタン粉)よりも高い光触媒能を示した。

第4章「Synthesis of Nb5+: Fe3+-Codoped TiO2Nanopowders for Magnetic and Photocatalytic Properties」(ニオブと鉄を同時添加した酸化チタンナノ粒子の合成とその磁気特性および光触媒特性) では、合成粉は主要相であるアナターゼとルチルのみから成り、金属相や磁性体不純物相は全く認められなかったことを示した。ルチル相の重量割合は、Ti4+のFe3+への置換で増加し、Nb5+の添加で減少した。ホスト材である酸化チタンのバンドギャップエネルギーは、アナターゼ相の量に影響された。合成粉には、室温における固有磁気特性として、強い常磁性と弱い強磁性が現れ、Fe3+含有量を増加させると強磁性は徐々に減少した。紫外光下での光触媒特性は、比較的低濃度のNb5+添加で向上し高濃度の添加で減少した。可視光下では、Nb5+添加は光触媒特定の低下をもたらした。

第5章「General Conclusions」(結論) では、本研究の結果を総括するとともに、今後の課題について論述した。


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