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論文題目「乾式熱分解法によるハロン処理に関する研究

竹内章浩

ハロン(halon, CBrF3)はフロン類の一種であり、消火能力が高いことから消火設備などに利用されてきた。しかしオゾン層破壊および地球温暖化を引き起こす原因となるため、1993年末に生産が全廃され、代替物へ切り替えられつつある。本研究では、酸化カルシウムと酸化マグネシウムから成る焼成したドロマイトとハロンを高温で反応させる乾式熱分解法により、廃ハロンの分解処理を行った。本論文では、ハロン分解により生成するF, Brを含んだガスとドロマイトとの反応機構の解明を行い、この研究成果を、連続的にハロンを分解処理する装置の開発に適用した結果をまとめたものであり、以下に示す6章から構成される。

第1章「緒言」では、ハロンに関する環境問題、世界および我が国のハロンに対する取り組みを「国家ハロンマネジメント戦略」の観点から示し、加えて、我が国のハロン管理量、ハロン使用者およびハロン管理者の現状についてまとめて、ハロン分解処理の必要性を述べた。既存の研究論文および実証研究の現状との比較から、乾式熱分解法を用いてハロンを分解処理する本研究の特徴を述べた。本研究の目的は、ハロンの分解処理に適した吸着材を開発することであり、これを達成するために、ハロン分解ガスと吸着材との反応機構の解明についても併せて行うことを述べた。

第2章「実験」では、本研究で使用する吸着材の特性、および実験方法について述べた。ハロンを高温で分解し、生成するF, Brを含んだガスを吸着材と反応させて、F, Brと吸着材との反応量を測定した。ハロン分解処理による吸着材の物理的・化学的変化を評価するための分析方法、および本研究で使用した実験装置と評価方法を示した。

第3章「生石灰およびドロマイトを用いたハロンの高温分解処理」では、ハロン分解処理の吸着材として焼成ドロマイトと焼成生石灰を用い、ハロン分解処理に伴うF, Brの回収率、吸着材のフッ化物・臭化物への転化率、および処理前後の比表面積の比較をした。焼成ドロマイトを用いた場合、回収率、転化率はともに焼成生石灰を用いた場合よりも向上し、焼成ドロマイト中に約30 wt %存在するMgOが回収率、転化率の向上に影響していることを述べた。

第4章「ハロン分解ガスの吸着に及ぼす固体吸着材組成の影響」では、第3章で示した焼成ドロマイト中のMgOがハロン分解処理におけるF, Brの回収率を向上させる効果について詳細な検討を行った。MgOのモル分率が異なる数種類の焼成ドロマイトを用いてハロン分解処理を行い、MgOのモル分率が回収率、転化率、および排ガス組成に及ぼす影響について考察した。MgOのモル分率が大きい焼成ドロマイトを用いた場合に回収率、転化率ともに向上する結果が得られ、この原因をMgOのモル分率と吸着材内の細孔の閉塞、および吸着材とハロン分解ガスとの反応性に関連づけて述べた。

第5章「ハロン分解ガスの吸着に及ぼす固体吸着材焼成条件の影響」では、ハロン分解処理における吸着材のフッ化物・臭化物への転化率を向上させるために、天然のドロマイトおよびドロマイト水和物を原料とし、焼成温度・焼成時間を変えて作製した細孔容積や比表面積の異なる吸着材を用いて、ハロンの分解処理を行った。転化率の変化を吸着材の細孔径分布と関連づけて考察し、吸着材とハロン分解ガスとの反応機構についても述べた。

第6章「乾式熱分解法を用いたハロン処理装置の開発」では、第5章までの研究成果を、連続的にハロンを分解処理する装置の開発に適用した。実際にハロン1301と代替フロンの一つであるフロン134aの分解処理を行い、その結果および環境影響への評価について述べた。

第7章「結言」では、乾式熱分解法によるハロン処理についての検討結果を整理し、さらに今後の検討課題について述べ、本論文の総括を行った。


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