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論文題目 「高周波誘導熱プラズマを用いた希土類元素−鉄−酸素系超微粒子の合成


菅澤正己

本論文は、「高周波誘導熱プラズマを用いた希土類元素−鉄−酸素系超微粒子の合成」と題し、元素ごとに需給にばらつきのある希土類元素 (R)の用途を拡大し,需給のアンバランスを解消することを目的として,急冷過程により未知化合物,準安定相,中間化合物が生成しやすい高周波誘導熱プラズマを用いて新規化合物RFe(3+x)O1.5(4+x) を単相に近い形で含む磁性超微粒子を合成することを試みた。

第1章「緒言」では希土類元素の用途とこれまでのrf熱プラズマを用いた酸化物超微粒子の合成例について述べた。

第2章「高周波誘導熱プラズマの数値計算」では,超微粒子を合成するための適正な実験条件を確認するために,実験に用いたrf Ar-O2熱プラズマのトーチ部の流れ場,温度分布および酸素ガスの濃度分布等を数値計算により求めた。その結果,粉体原料及び液体ミスト原料用トーチにおいて,原料供給用キャリアーガスがトーチ部の流れ場に及ぼす影響を調べた。また両トーチともにトーチ出口におけるプラズマ流は層流で,酸素原子リッチな雰囲気であり,酸化物の生成に適していることを確認した。

第3章「高周波誘導熱プラズマの分光計測」では,プラズマを定性的に観察した上で,分光計測と数値計算により得られたrf Ar-H2熱プラズマのトーチ部のプラズマ半径方向の温度・電子密度分布を比較し,両者の問題点を検討することにより,プラズマ超高温部のより正確な温度・電子密度分布を求める方法を提案した。

第4章「高周波誘導熱プラズマを用いた新規化合物YFe(3+x)O1.5(4+x)を含む超微粒子の合成」では,共沈粉,混合硝酸塩水溶液ミストおよびアモルファスクエン酸ゲル粉を原料としてrf Ar-O2熱プラズマに供給し,Y-Fe-O系超微粒子を合成した。その結果,原料中の個々の粒子のFe/Yがほぼ一定のアモルファスクエン酸ゲル粉を用いた場合に,X線回折 (XRD) パターンにおいてYFe(3+x)O1.5(4+x) を見かけ上単相に近い形で含む,平均粒径が10 nmオーダーで結晶性が良好な超微粒子を合成することができた。

第5章「新規化合物YFe(3+x)O1.5(4+x)を含む超微粒子のキャラクタリゼーション」では生成した超微粒子をXRDおよび透過型電子顕微鏡 (TEM) / 制限視野電子線回折 (SAD)でキャラクタリゼーションした結果,YFe(3+x)O1.5(4+x) は定比化合物であり,金属原子が面心立方格子を形成する立方晶で,XRDパターンにおける最大ピークが(444)である長周期構造を有することが分かった。またXRD, 振動試料型磁力計 (VSM) およびメスバウアー分光分析を用いたキャラクタリゼーションによりYFe(3+x)O1.5(4+x) は常磁性体であることを解明した。そして,超微粒子の磁性はγ-Fe2O3 (Fe3O4)の存在により生じていることを確認した。

第6章「高周波誘導熱プラズマを用いたYFe(3+x)O1.5(4+x)  (R: 希土類元素)を含む超微粒子の合成」では、原料中のYを他の希土類元素 (R)=Yb, Er, Ho, Dy, Gd, Eu, Sm, Nd で置換したアモルファスクエン酸ゲル粉を用いて,RFe(3+x)O1.5(4+x) を含む超微粒子を合成することを試みた。上述のRは左から右に行くにしたがってイオン半径が増大する。 R=Yb, Er, Ho, Dy, Gd, Euの場合は超微粒子中にRFe(3+x)O1.5(4+x) が生成していることを確認した。一方,R= Sm, Ndの場合は超微粒子中の生成物としてRFe(3+x)O1.5(4+x) を同定することはできなかった。これより,超微粒子中にRFe(3+x)O1.5(4+x) が生成するためにはRの適正なイオン半径範囲が存在し, Rのイオン半径とFeのイオン半径の比が1.72以下の条件で,RFe(3+x)O1.5(4+x) が生成することが分かった。また原料中のRのイオン半径と超微粒子中の副生成物 h-RFeO3, ε-Fe2O3等の相対的な生成量の相関も把握した。

第7章「総括」では本論文を総括し,今後の展望を述べた。