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論文題目 「高周波熱プラズマの特性解析とその廃棄物処理応用に関する研究」

坂野美菜

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高周波(RF)熱プラズマは、その高温・高反応性という特性を積極的に利用した応用分野の開拓が幅広く行われており、さらに近年の地球環境問題への認識の高まりから、廃棄物や環境汚染物質の分解・無害化への適用が注目されている。このRF熱プラズマを“工業製品”としてより活用するために、本研究では、環境対策技術としてのRF熱プラズマ装置開発を取り上げ、その基礎的検討を行った。本論文は、低周波数RF熱プラズマ装置開発を行い、そのプラズマ特性を系統的に明確にするとともに、難分解性物質の無害化処理への適用を検討した結果をまとめたものであり、以下に示す6章から構成される。

第1章「緒言」では、既往のRF熱プラズマトーチの開発例およびその応用例を紹介した。RF熱プラズマの安定化・大口径化に関する研究は、数値解析と装置開発の両面から行われているが、プラズマ特性に大きな影響を与える周波数およびプラズマトーチ径について系統的な調査はあまり行われていない。特に大型化が期待される低周波数時のプラズマ特性はほとんど検討されていない。また、近年の地球環境問題への認識の高まりから、廃棄物や環境汚染物質の分解・無害化へのRF熱プラズマの適用が注目されており、新たな応用技術開発の好機となっている。一方、日本における廃棄物処理事情を鑑みると、都市ごみ焼却灰を溶融した結果生じる溶融飛灰の処理が今後大きな社会問題になると予想される。これらの点をふまえて、RF熱プラズマを適用した溶融飛灰処理技術を提案した。そして本論文の目的は、0.5MHzの大出力・大型熱プラズマ装置を開発し、そのプラズマ特性を数値解析と計測により系統的に検討し、実際に溶融飛灰処理に適用する場合の可能性評価を行うことにある旨を述べた。

第2章「0.5MHz高周波熱プラズマ装置の開発」では、世界的に例のない低周波数(0.5MHz)の高周波熱プラズマを大気圧条件下で発生させる装置技術に関して述べた。RF出力100kWの周波数可変他励式電源を製作し、電源と熱プラズマ部とのインピーダンスマッチングをとることにより、0.5MHzにて大出力(75kW)の大気圧プラズマの点弧・維持に成功した。

第3章「高周波熱プラズマにおける低周波化の効果」では、溶融飛灰処理に適したプラズマトーチ設計の指針を得るため、数値解析を用いて周波数がプラズマ特性に与える影響を系統的に検討した結果について報告した。数値解析によって、実験的に確認が困難なプラズマ特性のパラメータ依存性を検討することを可能にし、さらに数値解析の結果を実際のRF熱プラズマ特性と比較することにより、数値解析の妥当性を確認した。現在最もよく用いられている4MHz帯域から低周波化した場合のプラズマ特性の違いを比較した。周波数がプラズマ特性に対して与える影響を定性的に把握することができたが、これらの影響は同時に多面的な効果を与えることも明らかになった。応用に適したプラズマトーチの特性は多方面からの検討が必要であり、トーチ設計においては以上の点を充分考慮した上で最適な条件を見出すことの重要性について述べた。

第4章「高周波熱プラズマ特性に対するトーチ条件の影響」では、溶融飛灰処理に適したプラズマトーチ設計の指針を得るため、第3章と同様の数値手法を用いて、トーチ径、あるいは水素添加がプラズマ特性に与える影響を系統的に検討した結果について報告した。トーチ条件がプラズマ特性に対して与える影響を定性的に把握することができたが、これらの影響は同時に多面的な効果を与えることも明らかになった。応用に適したトーチ設計においてはこうした効果を充分考慮した上で最適な条件を見出すことの重要性について述べた。

第5章「高周波熱プラズマの溶融飛灰無害化処理への適用」では、重金属類等が環境に悪影響を及ぼすことが懸念される溶融飛灰粒子を、RF熱プラズマにより分解もしくは分離させ、その後の凝集プロセスを制御して成分毎に個別回収を行うことにより、溶融飛灰を無害化・再資源化するシステムを提案し、そのプロセスの妥当性を検証した。平衡計算、熱力学的検討およびプラズマ発光計測とプラズマ導入後の灰組成解析により、RF熱プラズマ中での溶融飛灰の分解を確認し、さらに分解生成物の凝集状態が温度および共存ガス成分で変化することを利用して、回収物質の組成比を制御できることを、熱力学的検討、実験の両面から検証した。また実用化のためのシステム検討も行った。以上の検討結果から、RF熱プラズマを用いることにより、溶融飛灰を重金属濃度の高い成分と、重金属をほとんど含有しない無害な成分とに分離して回収できることを述べた。

第6章「結言」において、RF熱プラズマの特性解析とその環境への応用についての検討結果を整理し、さらに今後の検討課題について述べ、本論文の総括を行った。


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