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論文題目「高周波熱プラズマを利用したセラミックスおよび金属粉末の合成と機能化

小林法夫

本研究では, 高温かつ高化学活性という特徴を持ち, 超急冷プロセスが含まれる高周波誘導熱プラズマプロセスを用いて, セラミックスおよび金属のナノサイズ粉末の合成と機能化を試み, 生成粉末の粒子表面形態, 粒度分布, 化学組成や発光特性などを評価することで, 合成条件と生成粉末の関係について検討した.

第1章「序論」では, まず材料合成における高周波誘導熱プラズマの応用に関する研究背景を中心に述べる. 次に, 従来の合成法による機能性ナノ粒子の研究動向とその問題点, さらにそれらの問題を解決する方法として考えられた熱プラズマ処理法に関して述べる.

第2章「高周波熱プラズマを用いた球状銅系微粉末の合成と評価」では, 高周波熱プラズマによる蒸発・凝縮プロセスで100 nm程度の銅微粉末を合成した. 生成粒子の粒径変化が, プラズマ中の原料の蒸発量に対応していることを確認した. 原料である銅(Cu) 粉末の供給速度, 反応容器内圧力, プラズマガス組成を最適化することで, 銅の蒸気濃度が増加し, 銅微粉末を粒径100 nm 程度まで成長させることができた. 銅と高融点金属であるタングステン(W) の複合ナノサイズ粉末を合成した. Cu とW は融点が著しく異なり, 粒子生長過程での核生成温度も異なるので, 生成粉末は粒径50~80 nm のCu 粒子表面に, 粒径10 nm 程度 のW粒子が付着した構造であった. 一般的にナノサイズ粉末を焼結する場合, サイズ効果によって融点が降下するため, 熱収縮開始温度が下がる. 積層セラミックスコンデンサ(MLCC) の内部電極材料にナノサイズ粉末を用いる場合, その製造工程において, 内部電極層と誘電体層の熱収縮開始温度, 熱収縮率の不一致がコンデンサーの層間剥離や亀裂などの不具合をもたらす. CuとW の複合粉末は, 焼結時にWがCu粒子の焼結を阻害するため, 焼結時の熱収縮開始温度を純銅よりも高温側に移行でき, 収縮率も抑制できることを示した.

第3章「高周波熱プラズマを用いた(Ba,Sr)TiO3ナノサイズ粉末の合成と評価」では, 高結晶性で不純物を含まないペロフスカイト型複合酸化物ナノサイズ粉末の合成について述べた. チタン(Ti) イオン, バリウム(Ba) イオンあるいはストロンチウム(Sr) イオンを含む液体原料を酸素プラズマ中に噴霧すると, プラズマの高温領域で加熱され瞬時に蒸発して, 急冷過程で凝縮し, 気相から一段プロセスで(Ba,Sr)TiO3ナノサイズ粉末が生成した. 粒子生長過程において, 粒子は比較的高温の領域で生成するため, 結晶性の高い粒子となる. また, 原料に所定の化学組成を持つ沈殿のない均質混合液体原料を利用することで, ナノサイズ粉末の構成元素を制御できた. 原料中の陽イオン組成比(Ba+Sr/Ti)を0.0~1.0に変化させることで, 固溶比0.0~1.0の不純物を含まない(Ba,Sr)TiO3粉末が合成できた. 高い誘電率を有するBaTiO3系粉末のなかでも, (Ba,Sr)TiO3粉末は相転移温度に由来する誘電率の極大点を室温程度に調整した材料として, ナノサイズ, 高結晶性で不純物を含まない粉末が期待されている.

第4章「パルス変調高周波熱プラズマによる窒化ガリウム粉末の発光特性の機能化」では, 市販の窒化ガリウム粉末に, パルス変調したアルゴン−水素高周波熱プラズマを照射して, 窒化ガリウムのバンドギャップ(3.4 eV)に相当する波長380 nmの発光強度を高めることができた. 市販の窒化ガリウム粉末は, 酸化物と窒化ガリウム結晶中の酸素を含むため, 格子欠陥や不純物に起因するバンド端以外の発光や非発光再結合が見られる. パルス化による高濃度水素ラジカル照射は, 酸化物と窒化ガリウム結晶中の酸素を除去, あるいは格子欠陥と水素を結びつけることができる. 理論的に予想された水素ラジカル濃度が高く, プラズマ温度の比較的低い位置で, 窒化ガリウムにパルス変調高周波アルゴン−水素プラズマを照射することで, 熱的損傷を抑えながら, 酸素の除去と格子欠陥に起因する発光の抑制が実現でき, 発光効率が向上することが示された.

第5章「結論」では, 本研究では本論文を総括し, 今後の展望を述べた.



2007年12月 MRS-Jシンポジウムで奨励賞を受賞しました。

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