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論文題目「リング型陽極のロングDCアークにおける放電現象」

添田裕彦

緒言
熱プラズマは,高温,高化学活性などの特長を有していることより,廃棄物処理プロセスへの応用が期待されている.特に熱プラズマの1つであるロングDCアークは,従来のDCアークよりも一桁以上長い電極間距離を有しているため,被分解物質の滞留時間が長い.この特長を生かし,半導体プロセスでのPFCガス処理において実用化されている.しかし,さらなる処理効率の向上には,ロングDCアーク中基礎現象の理解が不可欠である.
本研究では,ロングDCアークの処理効率向上に向け,リング型の陽極を用いることで,陽極の冷却に奪われる熱エネルギーをプラズマジェット流として活用する装置を開発した.高効率な廃棄物処理プロセスの実現を目指し,リング型陽極を用いたロングDCアークにおける放電機構の解明を本研究の目的とする.

実験装置および計測手法
ロングDCアークは,直径20 mmの二重管水冷構造のCuを陰極とし,水冷Cuパイプ(直径8 mm,肉厚2 mm)を外径50 mm,内径34 mmのリング構造としたものを陽極とした.これら電極間に電圧を印加することで安定なロングDCアークを発生させた.操作条件としてアーク電流を8.0〜12 A,プラズマガス(N2)流量を20〜40 L/min,電極間距離を170〜420mmと変化させた.
高速度カメラを用いて,陰極,陽極,アーク,ジェットの変動現象を観察した.フレームレートを250〜5000fps,シャッタースピードを1/250〜1/525000 sの範囲で設定した.得られた高速度画像を解析し,アークおよびジェット部の発光面積変動,陰極点および陽極点の移動速度変動を評価した.また,得られた変動を高速フーリエ変換(FFT)することで,各変動の周期性を評価した.

実験結果および考察
アーク電流値10A,ガス流量30L/minにおける陰極点の移動速度,アーク,およびジェットの発光面積の時間変動の結果より,陰極には数kHz以上の速い変動が確認されているのに対し,アークとジェットでは数〜10Hz程度の変動があることがわかった.
これらの変動の相関性を確認するために,それぞれの変動係数を算出した.陰極点の変動係数の増加に伴い,アークおよびジェットの変動係数の増加傾向が確認できた.したがって,陰極点変動がアークおよびジェット変動と相関関係を有する可能性が示唆された.
アーク,ジェット,陰極の変動現象における周期性を明らかにするため,FFT解析を行い特徴的な周波数の有無を評価した.その結果,アークおよびジェットに関しては,共通する10Hz程度の周期性が確認された,一方,陰極に関しては特徴的な周波数は確認されなかった.
以上を踏まえ,電磁熱流体であるアーク不安定性や,熱流体由来の変動における周期性を評価した.結果,流体由来のガス流脈動に起因する変動が,アークおよびジェット変動において支配的だと考えられた.一方で陰極変動は,冷陰極(Cu)を使用していることに由来する,極めて短く不規則な変動周期(数〜数十kHz)を有する陰極点の発生と消失に起因する.以上より,陰極変動とアークおよびジェット変動に相関性が確認されなかったと考えられる.

結言
本研究では,高速度カメラを用いてロングDCアークの放電現象の高速度観察を行った.その結果,陰極変動とアークおよびジェット変動は相関関係にないことが明らかになった.それぞれの変動現象の制御方法の確立は今後の課題とする.



プラズマ・核融合学会 九州支部第21回支部大会
講演奨励賞 (2017年3月)
「外部磁場印加によるロングDCアークの制御」
この度は,講演奨励賞という栄誉ある賞を頂きましたこと,大変光栄に存じます.
私がここまで励んでこられましたのも,常日頃からご指導頂きました渡辺先生をはじめとした,研究室の皆様の支えのおかげだと存じます.
この場をお借りして,お世話になりました研究室の皆様に心より御礼申し上げます.


業績は修士論文をご覧ください。