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論文題目「水プラズマ物性値の推算および非平衡性の検討」

千綿啓太

緒言
フロンや代替フロンなど地球温暖化など環境問題を引き起こす物質を適切に分解する方法の一つとして、水プラズマを用いて分解する方法が検討されている。水プラズマ中には水素ラジカルや酸素ラジカルが安定に存在するので、ハロゲンと反応し有害な副生成物の発生を防げるからである。プラズマ中の物理化学過程を解明するツールとして、数値シミュレーションが有効である。しかし、水プラズマの数値シミュレーションにおいて物性値の取り扱いに注意を払わなければならない。本研究では、実際の水プラズマの数値シミュレーションを行うための物性値の推算と非平衡性の検討を目的とする。

計算方法
局所熱平衡(LTE)状態を仮定して精度が高いChapman-Enskog法を用いて物性値を求めた。Chapman-Enskog法では以下の4つの仮定が重要である。
2分子衝突のみであること
分子衝突は古典力学に従うこと
衝突は弾性衝突であること
分子間相互作用のポテンシャル関数が球対称であること>
Chapman-Enskog法は分子間の相互作用を詳細に考慮しており、その効果を示すパラメータを衝突積分で表すことによって輸送特性を計算する。実際計算する際は定義式をそのまま解くのは困難なため、本研究では既往の計算結果などから求めた。また、LTE状態を仮定し、圧力の変化による物性値の変化と温度に対する反応速度定数から非平衡性の検討を行った。輸送特性を大気圧下で計算した。さらに、反応非平衡時の物性値を考察するため、解離や電離が進行しにくい条件として10 atm、また比較対象として0.1 atmでの物性値を推算した。

結果・考察
圧力が大きくなるにつれて粘性係数、熱伝導度はピークが高温側にシフトし、電気伝導度は、値が大きくなった。粘性係数については、圧力が上昇するにつれて、高温領域でのイオンと電子のモル分率が低下しクーロン衝突による衝突積分の影響が小さくなるためである。圧力が上昇するにつれて解離度、電離度が小さくなるため、反応熱伝導度のピークは右にずれ、値も小さくなる。よって、熱伝導度は解離が進行する温度領域におけるピークが右にずれ、値も小さくなる。電子密度が高くなると電気伝導度は大きくなる。圧力が上昇するにつれて電子密度は上昇するが電離を始める温度領域は高くなるため、電気伝導度は10000 K付近では圧力が低いほうが大きく、電離が進んだ15000 Kでは圧力が高いほうが大きくなる。

結言
異なる圧力下での水プラズマの物性値を推算した。その結果、解離や電離が起こる温度の変化、または化学種のモル分率の変化により物性値が変化することが確認できた。非平衡状態における物性値に関する考察を行った。今後は、水プラズマの数値シミュレーションを正確に行うために、非平衡モデルを適用する必要がある。


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