特命リサーチ200X 「原因不明の火災事件を調査せよ」

日本テレビ 2002年9月22日 19時58分〜20時54分放送

1987年8月12日,栃木県にある蔵で火災が発生した。消防署の現場検証により,この火災の出火元は蔵の小窓付近に置かれていたわらくずで,これが蔵の中二階部分に保管されていた布団綿に引火し,火災が起きたことが判明した。しかしこの火災が極めて不可思議な火災であることが明らかになってきた。それはこの火災は蔵の内部だけの火災であるにもかかわらず,蔵の内部には火種となるものが全く存在しなかったということである。

ところが,火災発生の5分ほど前,蔵の近くに落雷があり,落雷直後に火の玉が目撃されていたことが判明した。落雷に伴って現れる火の玉の目撃情報は世界各地で報告され,未知の電気現象「球電」と呼ばれている。

球電の発生原因として様々な機構が提案されてきた。今回は渡辺助教授によって,熱プラズマを用いた実験によって球電の原因が実証された。球電の発生機構は,地表の温度が落雷によって約3000 Kまで上昇し,土の中に含まれる二酸化ケイ素が還元されて発生するケイ素のナノ粒子が,空気中で自然発火し球電が作り出されるというものである。

特にこの雷は,通常の雷に比べて電流で約5倍,放電時間は約6000倍も長かった。これらの点から,今回起こった謎の火災事件は,庭にあったサワラの木に稀に見る強力な落雷が発生。その電流が地面を加熱し,大量のケイ素のナノ粒子が発生。その後,大気により急激に冷却されたケイ素はナノ粒子のフィラメントを形成して自然発火し,球電を作り出した。そして,球電は蔵の小窓から内部に進入し火災を引き起こしたと考えられるのである。謎の火災事件の原因は,稀に見る巨大な落雷がもたらした球電という自然現象だったことが判明した。